「……好きだって、書いてあった。」

家継の低い声に、胸が大きく震えた。

いつの間にか空は曇り、細かな雨がしとしとと降り始めていた。

濡れた石畳に街の灯りがにじむ中、彼は一歩も揺らがずに私を見ている。

「俺……真白の気持ちに応えたい。」

その言葉に心臓が跳ねる。

「それって……」

私は無意識に一歩踏み出していた。

「両想いってこと?」

家継の瞳が深く揺れ、そして同じように一歩近づいてくる。次の瞬間、彼の唇が私の唇に重なった。

「……んっ……」

雨粒の音に混じって、幾度も重ねられるキス。冷たさよりも熱の方が強くて、世界が溶けていくようだった。

「はぁ……」

息を切らし、唇を離した家継が囁く。

「……好きだ、真白。」

雨に濡れた頬を伝うのが、涙なのか雨なのか、自分でも分からなかった。