私はただ、その時間を壊したくなくて、言葉を選ぶことすら惜しんでいた。

「なあ、この前の話なんだけど。」

不意に家継が口を開いた。

「……うん。」

私が頷くと、彼の視線が真っ直ぐに私を射抜く。

「俺に真白を、守らせてくれないか。」

「えっ……」

思わず立ち止まり、呆然とする。耳に届いた言葉が信じられなかった。

「……あれからずっと考えていた。」

「……あれから?」

「バレンタインのチョコをもらってから。」

半年前の、あの小さな勇気。

彼に無視されたと思い込んでいた告白。

心の奥にしまい込んでいた記憶が、突然引きずり出される。

「覚えて……たの?」

声が震える。家継の冷徹な眼差しが、今はただ揺るぎない誠意を宿して私を見つめていた。