「えっ……家継? 今日のお勤めは?」

「ああ、終わらせてきた。」

短い答えと共に、長い黒髪を後ろで束ねた姿が人混みの中にすっと立っていた。

まさかこんなところで会えるなんて――胸が高鳴り、思わず視線を逸らしてしまう。

「荷物、多いな。」

家継が静かに近づき、私の手から袋をひょいと取った。

「あ、だ、大丈夫だよ!」

慌てて手を伸ばすが、彼は微動だにせず片腕で軽々と抱え持つ。

「俺が持つ。……親父からの頼みだろ?」

冷たいようでいて、拒めない確かさを持つ声。

ただそれだけの仕草なのに、胸の奥がきゅうっと締め付けられる。

「……ありがとう。」

そう言うと、家継は視線を前に向けたまま、わずかに頬を緩めたように見えた。

しばらくの間、家継と並んで歩いた。

人混みの中で肩が触れる距離が、何とも言えず胸を高鳴らせる。