木戸さんがにっこり笑う。

木戸さんはにっこり笑って、安心したように肩を落とした。

その笑みは昔から変わらない。

両親を失って以来、何かと気にかけてくれる優しさに、私は何度救われただろう。

「ありがとうございます。」

自然と頭が下がる。家継も家頼も静かに頷き、席には穏やかな空気が流れた。

その瞬間だけは、当主としての責務も、巫女としての宿命も忘れていられた。

ただ隣で笑う人がいて、支えてくれる人がいる――それだけで十分だと思えた。

しばらくして、私は榊家の父――神主様からお使いを頼まれた。

商店街で幾つかの品を買ってきてほしい。ただそれだけのこと。

メモを片手に順番に品物を集め、紙袋を抱えて歩いていたその時だった。

「……真白?」

背後から名前を呼ばれ、驚いて振り返る。