「なあ、真白。」

「ん?」

ゆっくりと顔を上げたその瞬間、家頼の瞳がまっすぐに私を射抜いた。

「……俺にしとけ。」

一瞬、世界が静まり返る。

喧騒も笑い声も遠のいて、胸の鼓動だけが響いていた。

「なんかあったら、俺が真白を守るから。なっ!」

家頼が笑顔で言い切る。

その言葉はあまりにまっすぐで、胸の奥を揺さぶった。

――ずるい。守るから、なんて。女なら誰だって気持ちが傾いてしまう。

その時、家継が席に戻ってきた。

「何、話してた?」

低い声に、家頼は肩をすくめてビールをあおる。

「別に? 兄貴も飲めよ。」

「いや。」

家継は私に一瞥を送り、ふっと微笑んだ。

「お姫様がまだ飲めないんだ。俺も飲めないよ。」

――胸がきゅんとした。そういうさりげないところが、どうしようもなく好き。