『お前の想いは、届かぬ。』

冷たい声が風のように通り抜け、私は思わず振り返った。

だが、そこには家頼しかいなかった。

「えっ? 何?」

隣の家頼が問いかけてくる。

「ううん……何でもない。」

必死にごまかしたけれど、胸のざわめきは収まらない。

「っていうか、真白……おまえ、兄貴のこと見すぎ。」

「えっ……!」

顔が一気に熱を帯び、思わず俯いた。

「だって、あいつ気づいてるよ。だから横顔しか見せないんだ。」

「……っ。」

喉の奥で声が詰まる。

まさか家頼に気づかれていたなんて。私が家継を追い続ける視線に。

「……そんなに好きかよ。」

軽く笑うように言ったその言葉の奥に、押し殺した痛みが潜んでいる気がした。

私は「うん」とも「違う」とも言えず、ただ黙っているしかなかった。