「なっ! 俺の力は健在だ。」

家継が淡々と告げる。

「……まさか、さっきの火って。」

「ちょっと火力を強くしただけだ。」

その一言に、私は呆然とした。

そういえば家継は炎を操れるのだった。

「おい兄貴。厨房でやるなよ、厨房は。」

家頼が半分呆れたようにため息をつく。

「ははは。」

珍しく笑みを浮かべる家継。その横顔に、胸が詰まる。

――ねえ、どうしたらその瞳に、私が映るの?

たとえ巫女としてではなく、一人の女として見てもらえる日は来るのだろうか。

グラスに口をつけながら、心の奥でこみあげる想いを必死に押し隠す。

「ちょっとお手洗いに行ってくる。」

家継が立ち上がり、店の奥へと歩いて行った。

背中を見送った瞬間、胸の鼓動が早まる。――その時、耳の奥で何かが囁いた気がした。