「あいつ、最近調子悪いんだ。」

家頼が笑いながら言うと、家継の顔が一瞬で強張った。

「……おまえ、ひょっとして力が弱まっているのか?」

低く鋭い声。途端に周囲の空気が冷え込んだような気がした。

「何で?」

家頼は首を傾げ、能天気な調子で答える。

その明るさが場の緊張をわずかに緩めるが、家継の眼差しはまだ険しい。

「……いや、何でもなければいいんだが。」

その横顔に、私は思わず引き寄せられる。

冷徹に見える彼が、弟を案じている。

その事実だけで胸が熱くなった。

「家継は……力が弱まったりしないの?」

気づけば、そんな言葉を口にしていた。

その瞬間だった。

――ごう、と音を立てて厨房の火が大きく跳ね上がった。

「うわっ!」と店主が慌てる中、炎が一瞬だけ異様に赤く輝いた気がする。