胸の奥に、期待と寂しさが同時に広がる。

きっと家頼抜きで、二人だけの時に話したかったのだろう。

けれど、家継はいつも通り感情を見せず、冷静な仮面を崩さなかった。

その横で、家頼が大きな声をあげる。

「あー!やっぱビールはうまい!」

陽気に笑いながらジョッキを傾ける姿は、兄とはあまりに対照的で、見ているとつい笑ってしまう。

――けれど、ふと違和感に気づいた。

「あれ……? 家頼、式神は?」

いつもなら家頼の背後に控えているはずの、白銀の毛並みを持つ式神の姿が見えない。

社を離れていても、決して彼から遠ざかることはなかった存在が、今夜に限って見当たらないのだ。

胸の奥に、ひやりとした冷気が走った。

ざわめく店の喧騒の中、私だけが別の世界に取り残されたような感覚に囚われる。