翌日、教室の窓から差し込む光は、昨日と似たようなオレンジ色なのに、僕の心はどんよりと曇っていた。
昨日の出来事が、何度も頭の中でリピートされる。夕日に照らされた翔琉の顔、僕にだけ向けられた優しい声、そして、僕の腰を引き寄せた腕の熱さ――。
思い出すだけで、顔から火が出そうだ。
机に突っ伏して、誰にも見られないように顔を隠す。心臓が、まるで捕らえられた小鳥みたいに、肋骨の内側でばたばたと暴れていた。
あれは、全部“ネタ”のため。翔琉にとっては、“映える”写真を撮るための、ただの演出。
分かってる。分かっているのに、僕の心は勝手に期待して、勝手に傷ついて、ぐちゃぐちゃだった。
ガラッ!
突然、教室の引き戸が猛烈な勢いで開け放たれた。
そこに立っていたのは、息を切らして肩で息をする、翔琉だった。その血相を変えた姿に、教室中の視線が一斉に突き刺さる。
「トモッ!」
翔琉は、他のクラスメイトなんて目に入っていないみたいに、一直線に僕の席まで突進してきた。そして、机にドン!とスマホを叩きつける。
「やばい! トモ、マジでやばいって!」
その画面を見て、僕は息を呑んだ。
そこに表示されていたのは、昨日、夕日の中で撮られた僕たちのツーショット。
そして、その下には、信じられない数の通知が滝のように流れ続けていた。
ピコン、ピコン、ピコン、ピコン――。
鳴り止まない通知音。ハートのマーク、コメントの吹き出し、新しいフォロワーを知らせる人型のアイコン。そのすべてが、僕の許容量を遥かに超えて、頭の中に洪水みたいに流れ込んでくる。
『尊い以外の言葉が見つからない』
『このカップル、ガチで推せる!』
『#アオハルが過ぎる』
『次のデートはどこですか!?』
コメント欄に並ぶ、見ず知らずの人たちの熱狂的な言葉。僕の、あのどうしようもないくらい本気だった感情が、「尊い」の一言で消費されていく。
「ほら見ろ! 言っただろ! 俺のプロデュース能力、神じゃね!?」
翔琉は、僕の肩を掴んでガクガク揺さぶりながら、心の底から嬉しそうに叫んだ。その笑顔は、昨日僕に向けられたものよりも、ずっとずっと眩しかった。
キーンコーンカーンコーン……。
授業の始まりを告げるチャイムが鳴る。でも、その音は、鳴り止まない通知音と、クラスメイトたちの「すげえ」「やばくね?」っていう囁きにかき消されて、僕の耳にはほとんど届かなかった。
翔琉の嬉しそうな顔と、スマホの画面で光り続ける無数のハートマーク。
その間で、僕はただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
「僕と翔琉の“偽カップル垢”」は、僕の本当の気持ちを置き去りにしたまま、バズっちゃって、終われそうになかった。
昨日の出来事が、何度も頭の中でリピートされる。夕日に照らされた翔琉の顔、僕にだけ向けられた優しい声、そして、僕の腰を引き寄せた腕の熱さ――。
思い出すだけで、顔から火が出そうだ。
机に突っ伏して、誰にも見られないように顔を隠す。心臓が、まるで捕らえられた小鳥みたいに、肋骨の内側でばたばたと暴れていた。
あれは、全部“ネタ”のため。翔琉にとっては、“映える”写真を撮るための、ただの演出。
分かってる。分かっているのに、僕の心は勝手に期待して、勝手に傷ついて、ぐちゃぐちゃだった。
ガラッ!
突然、教室の引き戸が猛烈な勢いで開け放たれた。
そこに立っていたのは、息を切らして肩で息をする、翔琉だった。その血相を変えた姿に、教室中の視線が一斉に突き刺さる。
「トモッ!」
翔琉は、他のクラスメイトなんて目に入っていないみたいに、一直線に僕の席まで突進してきた。そして、机にドン!とスマホを叩きつける。
「やばい! トモ、マジでやばいって!」
その画面を見て、僕は息を呑んだ。
そこに表示されていたのは、昨日、夕日の中で撮られた僕たちのツーショット。
そして、その下には、信じられない数の通知が滝のように流れ続けていた。
ピコン、ピコン、ピコン、ピコン――。
鳴り止まない通知音。ハートのマーク、コメントの吹き出し、新しいフォロワーを知らせる人型のアイコン。そのすべてが、僕の許容量を遥かに超えて、頭の中に洪水みたいに流れ込んでくる。
『尊い以外の言葉が見つからない』
『このカップル、ガチで推せる!』
『#アオハルが過ぎる』
『次のデートはどこですか!?』
コメント欄に並ぶ、見ず知らずの人たちの熱狂的な言葉。僕の、あのどうしようもないくらい本気だった感情が、「尊い」の一言で消費されていく。
「ほら見ろ! 言っただろ! 俺のプロデュース能力、神じゃね!?」
翔琉は、僕の肩を掴んでガクガク揺さぶりながら、心の底から嬉しそうに叫んだ。その笑顔は、昨日僕に向けられたものよりも、ずっとずっと眩しかった。
キーンコーンカーンコーン……。
授業の始まりを告げるチャイムが鳴る。でも、その音は、鳴り止まない通知音と、クラスメイトたちの「すげえ」「やばくね?」っていう囁きにかき消されて、僕の耳にはほとんど届かなかった。
翔琉の嬉しそうな顔と、スマホの画面で光り続ける無数のハートマーク。
その間で、僕はただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
「僕と翔琉の“偽カップル垢”」は、僕の本当の気持ちを置き去りにしたまま、バズっちゃって、終われそうになかった。
