歩くんプロデュースによる「#カケトモ仲直りの夏休みデート大作戦」は、終業式の翌日から早速、実行に移された。
第一弾の舞台は、江の島の海。燦々と輝く太陽、どこまでも続く青い空と海。砂浜は、僕たちと同じように夏休みに浮かれた人たちでごった返していた。
「うおー! やっぱ夏は海だな! テンション上がるわー!」
僕の隣で、翔琉が子供みたいに声を上げる。仲直りしてから、翔琉は前みたいに、いや、前よりももっと、僕に話しかけてくれるようになった。そのことが、くすぐったくて、まだ少し慣れない。
「はいはい、先輩たち、浮かれてないでさっさと拠点確保しますよ! あ、大海先輩とちぃ先輩もこっちです、こっち!」
砂浜にレジャーシートを広げながら、歩くんが完璧なプロデューサーの顔で僕たちに檄を飛ばす。いつの間にか合流していた先輩たちは、二人で一つの浮き輪をのんびり膨らませていた。
「まずは水着に着替えて、海にダイブです! 夏は一瞬で過ぎ去る儚いものなんですから、一分一秒無駄にしないでください!」
歩くんの号令で、僕たちはぞろぞろと海の家の更衣室へ向かった。
僕と翔琉が先に着替えを終えて更衣室から出ると、先輩たちもラフなTシャツを脱いで水着姿になっていた。翔琉は流行りのサーフブランドの派手な柄のサーフパンツ。僕は、中学の時から着ている、少し色褪せたネイビーのシンプルな水着だ。大海先輩は黒のスポーティーなやつで、ちぃ先輩は絵の具が少し飛んだみたいな、アーティスティックな柄の水着を履いていた。
「お待たせしましたーっ♡」
最後に現れた歩くんが、着ていたパーカーをばさっと脱ぎ捨てて現れた。
その下には、フリルのついた、淡い水色のビキニタイプの水着。それは、完全に女の子が着るようなデザインなのに、歩くんが着ると、ジェンダーレスな魅力が爆発していて、息を呑むほど綺麗だった。
「……え、マジ?」
翔琉が、ぽかん、と口を開けて呟く。僕も、言葉が出ない。ただ、どきん、どきん、と心臓がうるさい。
「へえ、歩くん、やるじゃん。可愛いね」
ちぃ先輩だけが、面白そうに目を細めている。
「どーです? あゆの新作水着♡ この夏、絶対バズるんで!」
歩くんは、くるり、と一回転してみせる。そのあざとさに、僕たちの心臓は完全に鷲掴みにされた。
「……お、おう。……似合ってんじゃん」
翔琉が、照れ隠しみたいに、ぶっきらぼうに言う。その耳が、少しだけ赤いのが見えた。
歩くんは、そんな僕たちの反応を見て、にぃ、と満足そうに笑った。
「はい、今の顔、いただきましたー♡」
いつの間にか、歩くんの手にはスマホが握られていて、僕たちの“ガチ照れ”の顔が、ばっちりカメラに収められていた。
「さあ、先輩たちも早く海入りますよー!」
僕と翔琉も水着に着替えて、みんなで砂浜を駆けていく。
「うわ、つめたっ!」
翔琉が叫びながら、勢いよく海に飛び込んだ。僕も、恐る恐る足を入れる。ひんやりとした水の感触が、火照った体に心地よかった。
「トモ、遅えよ!」
翔琉が、僕に向かって水をかけてくる。
「わっ、つめたい!」
「あははは!」
僕たちは、子供みたいに水をかけ合って、笑い合った。歩くんは、そんな僕たちの姿を、少し離れた場所からスマホで撮り続けている。大海先輩は、そんな僕たちを少し離れた場所から、まるで父親のような優しい目で見守りながら、時々フィルムカメラのシャッターを切っていた。ちぃ先輩は、その隣で退屈そうに砂で何かを描いている。その姿は、まるで僕たちの夏休みを見守る、ちょっと気まぐれな保護者みたいだった。
一通り海を満喫して、お腹が空いた僕たちは、海の家に戻った。
「はい、翔琉先輩は焼きそば、トモ先輩はラーメンですね! もちろん、お互いに“あーん”して食べさせ合う写真を撮りますからね♡」
「マジか! やるやる!」
「……ええ」
歩くんの完璧な仕切りで、僕たちはまた“カップルらしい”写真を撮る。先輩たちや歩くんに見守られる中での“あーん”は、僕の心臓が爆発しそうだったけど、歩くんの「はい、チーズ♡」という声に、反射的に笑顔を作ってしまった。
SNS越しの偽物じゃない、本物の翔琉の笑顔。
それだけで、僕の心は満たされていく。
僕たちの投稿は、その日のうちに大きな反響を呼び、アカウントは再び熱狂の渦に包まれていった。
第一弾の舞台は、江の島の海。燦々と輝く太陽、どこまでも続く青い空と海。砂浜は、僕たちと同じように夏休みに浮かれた人たちでごった返していた。
「うおー! やっぱ夏は海だな! テンション上がるわー!」
僕の隣で、翔琉が子供みたいに声を上げる。仲直りしてから、翔琉は前みたいに、いや、前よりももっと、僕に話しかけてくれるようになった。そのことが、くすぐったくて、まだ少し慣れない。
「はいはい、先輩たち、浮かれてないでさっさと拠点確保しますよ! あ、大海先輩とちぃ先輩もこっちです、こっち!」
砂浜にレジャーシートを広げながら、歩くんが完璧なプロデューサーの顔で僕たちに檄を飛ばす。いつの間にか合流していた先輩たちは、二人で一つの浮き輪をのんびり膨らませていた。
「まずは水着に着替えて、海にダイブです! 夏は一瞬で過ぎ去る儚いものなんですから、一分一秒無駄にしないでください!」
歩くんの号令で、僕たちはぞろぞろと海の家の更衣室へ向かった。
僕と翔琉が先に着替えを終えて更衣室から出ると、先輩たちもラフなTシャツを脱いで水着姿になっていた。翔琉は流行りのサーフブランドの派手な柄のサーフパンツ。僕は、中学の時から着ている、少し色褪せたネイビーのシンプルな水着だ。大海先輩は黒のスポーティーなやつで、ちぃ先輩は絵の具が少し飛んだみたいな、アーティスティックな柄の水着を履いていた。
「お待たせしましたーっ♡」
最後に現れた歩くんが、着ていたパーカーをばさっと脱ぎ捨てて現れた。
その下には、フリルのついた、淡い水色のビキニタイプの水着。それは、完全に女の子が着るようなデザインなのに、歩くんが着ると、ジェンダーレスな魅力が爆発していて、息を呑むほど綺麗だった。
「……え、マジ?」
翔琉が、ぽかん、と口を開けて呟く。僕も、言葉が出ない。ただ、どきん、どきん、と心臓がうるさい。
「へえ、歩くん、やるじゃん。可愛いね」
ちぃ先輩だけが、面白そうに目を細めている。
「どーです? あゆの新作水着♡ この夏、絶対バズるんで!」
歩くんは、くるり、と一回転してみせる。そのあざとさに、僕たちの心臓は完全に鷲掴みにされた。
「……お、おう。……似合ってんじゃん」
翔琉が、照れ隠しみたいに、ぶっきらぼうに言う。その耳が、少しだけ赤いのが見えた。
歩くんは、そんな僕たちの反応を見て、にぃ、と満足そうに笑った。
「はい、今の顔、いただきましたー♡」
いつの間にか、歩くんの手にはスマホが握られていて、僕たちの“ガチ照れ”の顔が、ばっちりカメラに収められていた。
「さあ、先輩たちも早く海入りますよー!」
僕と翔琉も水着に着替えて、みんなで砂浜を駆けていく。
「うわ、つめたっ!」
翔琉が叫びながら、勢いよく海に飛び込んだ。僕も、恐る恐る足を入れる。ひんやりとした水の感触が、火照った体に心地よかった。
「トモ、遅えよ!」
翔琉が、僕に向かって水をかけてくる。
「わっ、つめたい!」
「あははは!」
僕たちは、子供みたいに水をかけ合って、笑い合った。歩くんは、そんな僕たちの姿を、少し離れた場所からスマホで撮り続けている。大海先輩は、そんな僕たちを少し離れた場所から、まるで父親のような優しい目で見守りながら、時々フィルムカメラのシャッターを切っていた。ちぃ先輩は、その隣で退屈そうに砂で何かを描いている。その姿は、まるで僕たちの夏休みを見守る、ちょっと気まぐれな保護者みたいだった。
一通り海を満喫して、お腹が空いた僕たちは、海の家に戻った。
「はい、翔琉先輩は焼きそば、トモ先輩はラーメンですね! もちろん、お互いに“あーん”して食べさせ合う写真を撮りますからね♡」
「マジか! やるやる!」
「……ええ」
歩くんの完璧な仕切りで、僕たちはまた“カップルらしい”写真を撮る。先輩たちや歩くんに見守られる中での“あーん”は、僕の心臓が爆発しそうだったけど、歩くんの「はい、チーズ♡」という声に、反射的に笑顔を作ってしまった。
SNS越しの偽物じゃない、本物の翔琉の笑顔。
それだけで、僕の心は満たされていく。
僕たちの投稿は、その日のうちに大きな反響を呼び、アカウントは再び熱狂の渦に包まれていった。
