「麗蘭さま、麗蘭さま!」
ある日、麗蘭の弐の間にうぐいす色のお着物をお召しの女御さまがいらっしゃいました。
「は、はい。」
「何時だと思うておるのだ? もう巳の刻ぞ。」
「なんと! も、申し訳ございませぬ。」
今日は皇子さま方との観桜会が巳の刻から始まっていました。女御さまが勢揃いする中、麗蘭さまがいらっしゃらないと、探しにきてくださったのでした。
「早う、お支度なさい。行くぞよ。」
「はい。う…。」
布団から起き上がろうとすると、麗蘭さまは口元を押さえて再び床に臥せてしまわれました。
「どうなさったのだ?」
「最近、季節の変わり目か腹を壊しておりまして。眠気もひどく、春眠暁を覚えずなのでございます。」
「何を抜かしておるのだ。何を甘えておる?」
女御さまは強引に麗蘭さまの肩を持ち上げて起こします。
「申し訳ございませぬ。女御さまのお名前は?」
麗蘭さまはこの女御さまの名前を知りませんでした。寝殿仕えをするようになってからよく見ていた女御さまでしたが、お名前を伺う機会はありませんでした。
「皇子さまの兄君蒼の宮さまにお仕えしております、呉竹にございます。」
呉竹さまはうぐいす色のお着物をふわりと持ち上げてご挨拶なさいました。
ある日、麗蘭の弐の間にうぐいす色のお着物をお召しの女御さまがいらっしゃいました。
「は、はい。」
「何時だと思うておるのだ? もう巳の刻ぞ。」
「なんと! も、申し訳ございませぬ。」
今日は皇子さま方との観桜会が巳の刻から始まっていました。女御さまが勢揃いする中、麗蘭さまがいらっしゃらないと、探しにきてくださったのでした。
「早う、お支度なさい。行くぞよ。」
「はい。う…。」
布団から起き上がろうとすると、麗蘭さまは口元を押さえて再び床に臥せてしまわれました。
「どうなさったのだ?」
「最近、季節の変わり目か腹を壊しておりまして。眠気もひどく、春眠暁を覚えずなのでございます。」
「何を抜かしておるのだ。何を甘えておる?」
女御さまは強引に麗蘭さまの肩を持ち上げて起こします。
「申し訳ございませぬ。女御さまのお名前は?」
麗蘭さまはこの女御さまの名前を知りませんでした。寝殿仕えをするようになってからよく見ていた女御さまでしたが、お名前を伺う機会はありませんでした。
「皇子さまの兄君蒼の宮さまにお仕えしております、呉竹にございます。」
呉竹さまはうぐいす色のお着物をふわりと持ち上げてご挨拶なさいました。



