龍が言うことには……

 ふらりと現れた彼は、明らかに純血の人間ではなかった。

 この国の人はほとんどが黒髪だ。当然翠子の髪も黒い。

 でもときどき彼のように鮮やかな髪色の人もいて、その場合ほとんどがあやかしの血を引いていると言われている。

 あやかしでも最初から人の姿をしているものもいる。よく知られたところでは天狗や鬼などがそうで、彼らは、髪も瞳も黒かったりするので見た目では判別できない。逆にあやかしのふりをして髪を染める人もいるが、外見を真似たところで人はどこまでも人でしかなく、よく観察すればわかる。

 リンは見た目だけでなく全身にまとう雰囲気から明らかに普通ではなかった。他を圧倒する威厳があり、人ならざるものを漂わせていた。

 それに、彼はあまりにも美しすぎる。

『あなたは天狗様ですか? それとも鬼?』

『俺は〝人〟だ』

 銀狐がケラケラと笑った。

『安心おし。こいつはお前を喰ったりはしないよ』

 人の姿をしたあやかし。特に鬼には凶悪なものもいて、最悪の場合は殺されて食べられてしまう。少なくとも彼は人の心を持っているようだと、翠子はホッと胸をなで下ろした。