龍が言うことには……

 すべてを水の泡にしてまでも、なぜ翠子を殺したいほど憎むのか。

 その気持ちが理解できず、翠子はため息を吐く。

「そんなに私が憎いのかしら……」

「お前だからじゃない、あいつの心には憎悪しかないのさ。血に飢えた鬼と同じだ」

 銀狐が酒を呑みながらそんなことを言った。

「しかし、いい酒だな」

 烏天狗と狸男も次々と徳利を空にしていく。

 今夜はあやかしを労うために、たくさんのお酒と食事を用意した。食事は人が食べる料理なので、河童以外の彼らには不満があるようだが、酒は気に入ってもらえたらしい。

「どうぞ、どんどん飲んでくださいな。助けてもらったお礼だから好きなだけ召し上がれ」

 
 愛香は大勢のヤクザ者を雇って邸の外に待機させていた。愛香の合図で邸の中をめちゃくちゃにするつもりだったらしい。それをあやかしたちが捕まえて取り押さえてくれたのだ。

「どれどれ、龍のいぬ間に」

 忍び笑う銀狐に翠子はつられて笑った。



 明くる日。

 翠子は誰かに優しく頬を撫でられる感触で目を覚ました。

「起こしてしまったか」

「竜胆さま、帰ってきたのですね」

 慌てて起き上がり、怪我をしていないかと目を走らせた。

「大丈夫だ。それよりも大変だったそうだな」

「皆さんが助けてくださりました」

 竜胆は翠子をぎゅっと抱きしめた。

「無事でよかった。本当に」