龍が言うことには……

 これまでの調べで犯人の目星はついた。女中のひとりが逃走したのだ。隠密の者が密かに女中の後を追うと、愛香がいる子爵邸に入ったという。
 主犯は愛香だった。

 実行犯の女中は愛香に脅されて犯行に及んだだけでなく、子爵邸からも放り出され吉原に連れて行かれたという。その後、月夜野家の隠密が助け出し今は密かに保護している。

「病気で倒れているとお返事して」

「かしこまりました」

 おそらく愛香は勇んでここに来るだろう。

 そう予想した通りだった。その日の夕暮れに、愛香がお見舞いに現れたのだ。



「お茶を持って参ります。少々お待ちください」

 薬草の匂いが立ち込める部屋に愛香だけが通された。

 翠子は真っ青な顔で布団に寝ていたが、よろよろと起き上がった。

「お見舞い、に、来てくださったの?」

 息も絶え絶えに礼を言う。

 すると口もとに手をあてた愛香は耐えきれないように笑いだした。

「あんた、小公爵様のお子を身ごもったんだって?」

 くっくっくと愛香は忍び笑う。

「残念だね。あの薬はたったひと口で一週間もしないうちに死ぬんだってよ」

「えっ……そ、それじゃ」