龍が言うことには……

 竜胆の指示で、スプーンやフォークは毒に反応する銀製のものに変えてある。ジャガイモのスープにゆっくりとスプーンを入れたとき、僅かだが色が変わったのを翠子は見逃さなかった。それだけじゃない。妊娠してから感覚が鋭くなったようで、ほんの少しだがスープからいつもとは違う匂いを感じたのだ。

 素知らぬ顔で執事を呼び、毒の混入を知らせた。

 翠子は飲んだふりをしただけで、実際は口にしていない。犯行が成功したと思わせるために倒れた。

「執事が犯人を突き止めるまで、私はここで苦しんでいることにするわ。だからしずくも、そのつもりでいて」

 神妙に頷いたしずくは「うわーん」と声をあげて泣く、ふりをした。大げさなほどに。

 犯人がこの邸にいる。考えたくない恐ろしい事態に、緊張が張り詰める。



 翠子が倒れて二日後。

 愛香と叔母がいる子爵家から招待状が届いた。愛香の誕生日を機にこれまでの無礼を詫びて、友好を深めたいという内容だった。

「いかがいたしましょう」