龍が言うことには……

 翠子の放つ匂いが龍の宝珠を授かったからだとしても、そうでなかったとしても、彼女はあやかしどもに好かれている。

 今日も危険な目に遭わないよう必ず助けるはず。

 耳を澄ませると今度は、甲高い犬の悲鳴が聞こえた。

「あっ!」

 柊木の女中頭が叫び、山から犬が尻尾を巻いて次々と下りてくる。中には怪我を負っている犬もいて、総数十匹。まっすぐに端に立っていた柊木家の下男のところに走ってきて集まった。

「ほう、こちらでは野犬を手懐けているようだ」

 柊木はギョッとしたように慌てふためく。

「お前! なにをやってるんだ!」

 柊木に怒鳴られた下男は犬を連れてその場から逃げ出した。

 翠子が老婆を背負って下りてきたのはそれから間もなくだった。竜胆の家臣がすかさず駆け寄り、翠子に礼を言って老婆を引き受ける。

「あ、あいつはバケモノよ!」

 愛香が叫んだ。

「オオカミがいるのに生きて帰るなんてバケモノ以外に有り得ないわ!」

「ほうー、ではこの山にキノコを取りに来る我が家の女中もバケモノだと言いたいわけですね?」

 実際バケモノのあやかしだが。

「そ、それは、でもあいつは!」