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翠子が山から下りてくるのを待つ間、竜胆は愛香に念を押した。
「本当にあなたが老婆を助けたんですね?」
「はいそうです。でもこの前は、オオカミなんていなかったんです」
目にいっぱい涙を貯めた愛香はそう言うなり泣き崩れた。
「愛香、あなたはよく頑張ったわ」
伯爵夫人も涙ながらに愛香を抱き寄せ、柊木伯爵も「そうだそうだ」と娘を労る。
(呆れたもんだ)
目の前で繰り広げられた茶番劇に、竜胆と彼についてきた月夜野の家臣たちは苦笑を禁じ得なかった。
たすき掛けにして袖をくくっただけで、振袖に草履のまま山に入ろうとしたあたり、嘘を貫く下準備すらしなかったらしい。



