龍が言うことには……

「だってリンからそう言われているんだもの」

 翠子は頬を膨らませて狐を睨む。

『もし、もう一度老婆を助けろと言われたら、熊岩に山姥がいるから連れて帰るんだ。わかったな?』
 そうリンに言われた通りにするしかない。

「そういえばさっき赤い着物の娘が山に入ってきたよ」

「えっ?」

 先程見た愛香は赤い振袖の着物を着ていた。

 だが、あんな恰好ではこの山を登ろうとするなんて無謀すぎる。女に化けた狐も美しい着物を着ているが、あやかしゆえにひょいひょいと軽く飛んでいく。人間にそれはできない。

「バカな娘だよ。二、三歩踏み入れただけで、オオカミに追いかけられて泣きながら出て行ったわ」

 さっき聞こえた悲鳴は愛香の悲鳴だったのか。

「クゥ」

 今度は河童たちがひょこひょこと顔を出した。

「あっごめんね。今はなにも持っていないの」

「クゥ……」

 しょんぼりする河童の頭のお皿を銀狐が叩く。

「食いしん坊め」

 河童は怒るが人に化けた銀狐の半分ほどの背丈しかない。狐にからかわれながら河童は翠子の山袴の腰にぶら下がった布袋を引っ張った。