龍が言うことには……

 中に戻って慌てて山袴を履く。山袴は継ぎ接ぎだらけだがこれしかないので仕方がない。

 山は結構な急斜面を登るので振袖を着ただけでは無理だ。脚がむき出しになってしまう。翠子は蓑を被り藁の長靴を履いて外に出た。

「な、なんだその恰好は」

 せっかくの着物が見えず、あまりにみすぼらしい格好に叔父は顔を真っ赤にして怒る。

「で、ですが山は」

「さすが行き慣れていらっしゃるようだ。さあでは翠子さん、行きましょう」

 シュンとして俯きながら小公爵に背中を押されるようにして並んで歩く。ぴったりと隣に彼がいるおかげで叔父は翠子に近づけない。

 もしかすると山でリンが待っているのかしらと期待で胸が弾む。

 邸の裏門を出ると、叔母が愛香を抱き寄せていた。

 見れば赤地の美しい着物の裾が汚れていて、彼女は泣いているようだ。少し離れたところに女中頭や下男たちがいて、ほかにも数人見かけない人たちがいる。

「さあ翠子さん、よろしくお願いします」

「はい。わかりました」

 小公爵に促されて翠子は山に入って行った。