ハッとして顔を上げてもなにもわからない。ただ不安な気持ちを抱えていると、扉の鍵を開ける音がした。
「翠子、この着物に着替えるんだ」
叔父が苦虫を噛み潰したような顔をして、愛香の華やかな振袖を差し出した。
「はい……」
「急げ!」
「は、はい」
継ぎ接ぎの着物から美しい振袖に着替えた翠子が離れを出ると叔父が待っていた。
「いいか。よく聞け。お前は――」
「ほぉ、こちらにいらっしゃいましたか」
叔父の声に被るように話しかけてきた声に振り返ると、黒い軍服を着たすらりと背の高い若い男性がいる。
「しよ、小公爵」
慌てふためく叔父に彼は冷ややかな目を向けて口もとだけで微笑む。
誰かに似ているような気がしたが、翠子はひとまず慌てて頭を下げた。
「あなたが翠子さんですね?」
「はい」
「では、裏の山であなたが助けた老婆をもう一度助け出してくれますか? 同じ場所にいますから」
もしやとハッとしたが、早打ちする胸の鼓動を抑えるように息を呑む。
「どうしました?」
「あ、あの山に行くなら山袴を履いてもよろしいでしょうか」
「もちろんです」
「翠子、この着物に着替えるんだ」
叔父が苦虫を噛み潰したような顔をして、愛香の華やかな振袖を差し出した。
「はい……」
「急げ!」
「は、はい」
継ぎ接ぎの着物から美しい振袖に着替えた翠子が離れを出ると叔父が待っていた。
「いいか。よく聞け。お前は――」
「ほぉ、こちらにいらっしゃいましたか」
叔父の声に被るように話しかけてきた声に振り返ると、黒い軍服を着たすらりと背の高い若い男性がいる。
「しよ、小公爵」
慌てふためく叔父に彼は冷ややかな目を向けて口もとだけで微笑む。
誰かに似ているような気がしたが、翠子はひとまず慌てて頭を下げた。
「あなたが翠子さんですね?」
「はい」
「では、裏の山であなたが助けた老婆をもう一度助け出してくれますか? 同じ場所にいますから」
もしやとハッとしたが、早打ちする胸の鼓動を抑えるように息を呑む。
「どうしました?」
「あ、あの山に行くなら山袴を履いてもよろしいでしょうか」
「もちろんです」



