月夜野の小公爵と言えば翠子でも知っている。
裕福な公爵家の嫡男で、見目麗しいだけでなく武勇に優れ特殊防衛隊の司令官でもあるという。
昨日わざわざ愛香がこの離れに来た。
『私ね、月夜野の小公爵様と結婚するのよ。あんたも私もお似合いの相手を見つけてよかったね』
愛香はこの前のように、げらげらとお腹を抱えて笑っていた。
「あっ!」
しずくが慌てて近くの木の陰に隠れる。
どうしたのかと窓から覗いたが、邸の北側にある離れからはなにも見えない。
それでも大勢が歩く音は聞こえた。
雪は解けたが空はどんよりと曇っていて散歩をするには寒すぎる。いったい何事だろうと耳を澄ましていると、足音は離れの横を通り裏山の方へ向かっているようだ。
(裏山でなにかあったのかしら)
しずくは行ってしまったようで話しかけてはこない。なんにせよ物音を立てたら叔父が激怒するのが目に見えているので、翠子は火鉢の近くに座り息をひそめた。
足音が消えてしばらくして――。
「きゃーーー助けてーー」
甲高い女の悲鳴が響いてきた。
裕福な公爵家の嫡男で、見目麗しいだけでなく武勇に優れ特殊防衛隊の司令官でもあるという。
昨日わざわざ愛香がこの離れに来た。
『私ね、月夜野の小公爵様と結婚するのよ。あんたも私もお似合いの相手を見つけてよかったね』
愛香はこの前のように、げらげらとお腹を抱えて笑っていた。
「あっ!」
しずくが慌てて近くの木の陰に隠れる。
どうしたのかと窓から覗いたが、邸の北側にある離れからはなにも見えない。
それでも大勢が歩く音は聞こえた。
雪は解けたが空はどんよりと曇っていて散歩をするには寒すぎる。いったい何事だろうと耳を澄ましていると、足音は離れの横を通り裏山の方へ向かっているようだ。
(裏山でなにかあったのかしら)
しずくは行ってしまったようで話しかけてはこない。なんにせよ物音を立てたら叔父が激怒するのが目に見えているので、翠子は火鉢の近くに座り息をひそめた。
足音が消えてしばらくして――。
「きゃーーー助けてーー」
甲高い女の悲鳴が響いてきた。



