「そうか。わかった」

 叔父が離れ入口の扉を閉じるのを頭を下げたまま待っていると「それから」と声をかけられた。

「男爵との縁談を早めるぞ」

 翠子の喉が苦しげにゴクリと音を立てた。

「はい……わかりました」

 叔父が離れの扉に鍵をかける音を聞きながら、翠子は大きく息を吐く。

 首から下げた笛を握り締め、立ち上がった翠子は、柵で塞がれた窓から空を見上げた。

 銀色の髪の彼を思い浮かべる。

(リン……これでいいのよね?)