どうか一日も早くリンが行動を起こしてくれますように。

 ここから救い出してくれるだけでいい。それだけでいいからとにかく早く。

 そう願いつつキュッと唇を噛んだときだった。

 ガチャガチャと乱暴に鍵を開ける音がして、叔父が現れた。

「どういうことだ! 翠子。お前、山で人を助けたというのは本当か?」

 ハッとした。どういう状況かはわからないが、リンが助けようとしてくれているに違いない。
 ごくりと息を呑んで「はい」と頷いた。

 リンから言われていたのだ。
『いいか? もし裏山で人を助けたかと聞かれたら、老婆を助けたと答えるんだ。場所は――』

 いよいよそのときが来た。
 翠子はどきどきと高鳴る胸を抑えながらリンが言っていた話を思い起こす。

「いつだ」

「先日、お客様がお見えになって山に行きましたときに、お婆さんを助けました。なんでもこの時期に採れる珍しいキノコがあるとかで」

 頭を下げ、畳に額をつけるようにして慎重に答えた。

「お前は自分が追い出されたとは言ったのか?」

「いいえ、そのようなことは申しません。ただ助けてという声が聞こえたので来たと言いました」