竜胆は上から見下すように柊木に視線を送る。

 居並ぶ面々は、何事かと彼らふたりを交互に見比べた。

 竜胆はまだ二十歳と若いが、特殊防衛隊の総司令官であり、その若さとは裏腹に泰然自若とした落ち着きを纏っている。

 黒髪に濃い茶の瞳をしているが純血の人間だと信じる者は誰もいない。特殊防衛隊が戦う相手は人ならざるものであり、とても普通の人間が立ち向かえる相手ではない。

 だが彼は人智を越える力で邪悪なものをたやすく薙ぎ払い、戦場を支配する。

 月夜野一族は龍の眷属といわれているが、それはあくまでも噂に過ぎず真実は誰も知らない。なんにせよ、この国で三家しかない公爵家の御曹司である彼を、軽く見る者はひとりもいなかった。

「翠子さんなら、私が嫁に迎えるつもりでしてね。柊木伯爵にはこれから正式に申し込むつもりでいたんですよ」

 一同があらためてギョッとしたように目を見張った。

 月夜野竜胆は帝国でもっとも理想とされる花婿だ。