遠くへ離れていく。
あの白い結晶を懸命に追いかける。
それは、とても脆く、持つのがもったいないほどもの。
そして、全く手が届かないもの。
なのに、追いかけているのは。
『楽』ばかりしてきた日々。
『楽』をすることを我慢できた日々。
道端に咲くあの『花』は、華やかで、まぶしかった。
手に入れたその『花』は、棘だらけ、真っ黒だった。
誰でもないものに変わりたい。
空気になりたい。
『化けたい』
手にしなければならない。必要なのに。
ああ、
おちちゃった
伸ばされた救いの手。
「助けるとか、救うとか、いらないよ。離して」
顔は見たくなかった。
同じ制服を着て、お揃いのミサンガを足首につけていたから。



