7月
――ガン!
頭で受ける衝撃。自分で作り上げた痛み。
夏が生み出した頭痛に耐えられず、痛みを痛みで誤魔化していく。
馬鹿だよな。普通、こんなことしないよな。
「夏が生み出した頭痛」ってなんだよ。
この頭痛は夏のせいじゃない。あの存在のせいだ。
8月
――はー、。
夏が終わる。また、日常が始まる。非日常に浸っていたい。学校。目に入れたくない存在を毎日見る可能性がある。何度避けても、視界に入ってくる。だって、毎時間、前に座っているのだから。聞こえるように悪口を言い続ける。溜息がいつしか吐き出せなくなり、心に溜まっていった。
学校。あの存在のせいで嫌いだ。ずっと好きだったのに、今は嫌いだ。
給食、休み時間に部活仲間とするバスケ、得意な体育の授業。すべて壊された。
給食の時間になり、配膳が始まるとエプロン姿を笑ってくる。小学生の頃に作ったサッカーチームのデザインのエプロン。小学生の時に身長が伸び切ってしまったからまだ当たり前のように使っている。丈が短いわけではないし、古びてはいない。なのに、「幼稚だ」「ダサい」とモノを大事にしていることを馬鹿にしてくる。おかしい。モノも人も大事にできないほうがよっぽど幼稚でダサくて馬鹿馬鹿しい。
学業もスポーツを並大抵にできた。でも、あの存在はそれ以上にできていた。
なぜか敵対視された。
暴言、暴力、すべてやられた。やりたいと思うほどに。
9月
――バシャ。ポタ、ポタ
大雨に打たれたわけではないのに。水泳の授業なんてだいぶ前に終わっているのに。学校から帰ってきたばかりだから風呂上がりなわけでもないのに。
あいつらから水をかけられたんだ。突然体育館裏に呼び出されて。
あいつの取り巻きが「ちゃんと謝りたい。着いてきてくれ」と言った放課後。
わかってた。謝られるわけがないって。
また何かされる。わかってた。
なのに、小さな希望を求め、着いて行ってしまったのだ。
家には誰もいない。小さな救いだった。
全身ずぶ濡れの状態で風呂場に駆け込む。床に垂れていく水。歩いた跡は床に確かに残っていた。
シャワーをいくら浴びてもかけられた水の感覚が消えない。
今日は寒かった。だから、水が冷たかった。
夏休みという長い期間を経てもあいつらは変わらなかった。もう、変わることはないのだろうか。ずっと最低なやつとして生きていくのだろうか。
人のことを傷つけ、それを楽しみ、生きがいにしている人間は人間じゃない。可哀想だ。同じぐらい可哀想だ。
金属バット。
また殴られた。痛い。なんで、致命傷にしてくれないのか。死なないようにしてくるのは、もう狂ってる。
自分でやろう。
夕焼け。
狭い路地で一人。
近くにあった鉄パイプを持つ。こんな物騒なものは道端に落ちていてはいけないと思いつつも使おうとしている人間が言えることではないから黙っておく。
息を堪え、頭に打とうとする。
勢いをつけ、どうにかここから逃げ出せるように。
狭い路地から引っ張り出されていた。
遠くに転がっていった鉄パイプ。
取り戻させてほしい
青い春を
――ガン!
頭で受ける衝撃。自分で作り上げた痛み。
夏が生み出した頭痛に耐えられず、痛みを痛みで誤魔化していく。
馬鹿だよな。普通、こんなことしないよな。
「夏が生み出した頭痛」ってなんだよ。
この頭痛は夏のせいじゃない。あの存在のせいだ。
8月
――はー、。
夏が終わる。また、日常が始まる。非日常に浸っていたい。学校。目に入れたくない存在を毎日見る可能性がある。何度避けても、視界に入ってくる。だって、毎時間、前に座っているのだから。聞こえるように悪口を言い続ける。溜息がいつしか吐き出せなくなり、心に溜まっていった。
学校。あの存在のせいで嫌いだ。ずっと好きだったのに、今は嫌いだ。
給食、休み時間に部活仲間とするバスケ、得意な体育の授業。すべて壊された。
給食の時間になり、配膳が始まるとエプロン姿を笑ってくる。小学生の頃に作ったサッカーチームのデザインのエプロン。小学生の時に身長が伸び切ってしまったからまだ当たり前のように使っている。丈が短いわけではないし、古びてはいない。なのに、「幼稚だ」「ダサい」とモノを大事にしていることを馬鹿にしてくる。おかしい。モノも人も大事にできないほうがよっぽど幼稚でダサくて馬鹿馬鹿しい。
学業もスポーツを並大抵にできた。でも、あの存在はそれ以上にできていた。
なぜか敵対視された。
暴言、暴力、すべてやられた。やりたいと思うほどに。
9月
――バシャ。ポタ、ポタ
大雨に打たれたわけではないのに。水泳の授業なんてだいぶ前に終わっているのに。学校から帰ってきたばかりだから風呂上がりなわけでもないのに。
あいつらから水をかけられたんだ。突然体育館裏に呼び出されて。
あいつの取り巻きが「ちゃんと謝りたい。着いてきてくれ」と言った放課後。
わかってた。謝られるわけがないって。
また何かされる。わかってた。
なのに、小さな希望を求め、着いて行ってしまったのだ。
家には誰もいない。小さな救いだった。
全身ずぶ濡れの状態で風呂場に駆け込む。床に垂れていく水。歩いた跡は床に確かに残っていた。
シャワーをいくら浴びてもかけられた水の感覚が消えない。
今日は寒かった。だから、水が冷たかった。
夏休みという長い期間を経てもあいつらは変わらなかった。もう、変わることはないのだろうか。ずっと最低なやつとして生きていくのだろうか。
人のことを傷つけ、それを楽しみ、生きがいにしている人間は人間じゃない。可哀想だ。同じぐらい可哀想だ。
金属バット。
また殴られた。痛い。なんで、致命傷にしてくれないのか。死なないようにしてくるのは、もう狂ってる。
自分でやろう。
夕焼け。
狭い路地で一人。
近くにあった鉄パイプを持つ。こんな物騒なものは道端に落ちていてはいけないと思いつつも使おうとしている人間が言えることではないから黙っておく。
息を堪え、頭に打とうとする。
勢いをつけ、どうにかここから逃げ出せるように。
狭い路地から引っ張り出されていた。
遠くに転がっていった鉄パイプ。
取り戻させてほしい
青い春を



