目を覚ますと、布団に岩井の姿はなかった。
 どうやら早く起きて支度していたらしい。洗面所で歯ブラシを咥えた岩井に「おはよ」と声をかけつつ、トイレに入る。
 今日の自由行動、一緒に過ごさない?
 それを言うだけなのに心臓が口から出そうなほどバクバクと高鳴っている。白川やクラスメイトがいるこの空間で誘うのは難しい。となると、朝食の時間しかチャンスはない。

 食堂にはすでに大勢の生徒が集まって食事していた。席は決まってないから自由に座れる。
 窓側にいた陽キャグループの一人が岩井の姿を見た途端、こちらに向かって手を大きく振った。

「岩井! こっちで食べよーぜ」

「あー……」

 ちらっと岩井が俺のことを見る。気を遣わせてしまうのが嫌で、「行ってこいよ」と背中を押した。
 ──別に、元々仲がよかったわけではない。あいつは陽キャのグループで一番目立つ奴で、いつもクラスの中心にいた。それが告白をきっかけに俺と仲良くなったというだけ。俺よりもあの陽キャグループの人たちのほうがよっぽど、仲がいい。

「一ノ瀬、俺らもあそこ混ざる?」

「いい。白川が行けば」

 白川も陽キャグループの一人なのに、沖縄に来てから俺や岩井とばかり絡んでいる。退屈しないのだろうか。

「俺はいいよ。一ノ瀬と一緒に居たいし」

「……そ」

 ──最低だ。今の言葉を岩井から聞きたかったと思ってしまうなんて。

 サラダやパンが乗ったトレーを持って、白川と向かい合わせで座った。場所は岩井たちがいるテーブルの隣。たまたま空いたのがここしかなかった。
 陽キャグループの中には、クラスの中で特に目立つ複数の女子たちも含まれている。そのやけにテンションの高い会話の内容が、声が大きいせいで嫌でも耳に入ってきた。

「遼、最近ぜんっぜんうちらと遊んでくれないね」

「そうやった?」

「そーじゃん。一ノ瀬とばっかりいるし~」

「振られてるくせに」

「あはっ、やめなよ恵美」

「しー! 聞こえちゃうから」

 わざと聞かせてるんじゃないのか?
 そう思うほど声が大きい。近くにいるからか、女子たちに時折見られてる気もする。

「一ノ瀬、大丈夫? さっきから手止まってるけど」

「あ……うん」

 心配そうに見つめてくる白川越しに、隣のテーブルにいる岩井がここから見える。飯を食べてるというのに女子にキャッキャと話しかけられて笑ってるのが、心底ムカついた。

「今日の自由行動、岩井とどっか行く?」

「え?」

「いや、できたら……一緒に過ごしたいなって」

「……白川。昨日も言ったけど、俺は」

「わかってる! 可能性ないのはわかってる。でも友だちとして仲良くするのも嫌?」

 俺の言葉を遮った白川は、また苦しそうな顔で見つめてきた。その姿が、先輩に片思いしていたときの自分と重なって見える。
 ──苦しくて、やめたくてもやめられない。片思いとはそういうものだ。
 白川が初めて俺に気持ちを明かしたあの日から、頻繁にアプローチされてきた。それこそ岩井と同じくらい、はっきりと。そしてしつこいくらいに。でもなんで俺はこいつじゃなくて、岩井に心を許したのだろうか。
 陽キャで明るい性格。二人の共通点は多いけど、容姿はもちろんのこと、考え方がまるで違う。
 男が好きなのかとバカにされたときや、白雪姫の格好をしたときの反応。そして──岩井が俺にかけてくれた言葉、傷つかないようにする配慮、与えてくれた安心できる場所。
 それらすべてが、先輩しか眼中になかった俺をこんなにも変えてしまったんだ。

「友だちとしてならいい。けど、自由行動は……岩井を誘おうと思ってて」

「そ、そっか。でもあいつ……」

 白川が続きを言う前に、隣のテーブルから甲高い女子の声が響いた。

「え~なんでよ、うちらと一緒に水族館いこ?」

「私も岩井に来てほしー」

「じゃあさ、岩井と俺らと恵美ちゃんたち皆で水族館いかね?」

「それいーね!」

「あ、でも俺は」

 岩井が困惑した顔で口を開いた瞬間、それを阻止するように隣にいた男が肩に腕を回す。

「最近付き合い悪いんだからさ、今日くらい俺らと遊ぼうぜ」

「……わかった。ええよ」

(いいのかよ!?)
 まさか承諾するとは思ってなくて、咄嗟に椅子から立ち上がりかけた。
 ぐっと拳を握って感情をコントロールしようと試みているうちに、陽キャたちは席を立って行ってしまった。

「あれいいの? 浮気すんなって言ってやれば?」

 白川が場を和ませるために言った冗談が、ぐさっと胸に突き刺さる。
 もし付き合っていたら、そうやって言うこともできた。そもそも今日も一緒に過ごせたはずだ。

「付き合ってもないのに……っ、言えるかよ」

 俺はなにをやってるんだ。
 誘うタイミングはいくらでもあったのに、今じゃない今じゃないと誘う勇気が出ず、挙句の果てに女子に取られるなんて。
(ってか、あいつは俺と過ごしたくないのかよ!?)
 沖縄でたった一日、二人だけで自由に遊べる滅多にないチャンス。それを俺じゃなくて、友だちと過ごすという選択をされた。陽キャグループや女子より優先順位が低いと遠回しに言われた気分だ。
 昨日、岩井は怒っていた。──泣いてもらえるほど好きになってもらえる自信ないねん──と。そしてストラップもくれたし、まだ好きでいてくれてるとは思う。

「一ノ瀬?」

 急に立ち上がった俺に、白川は目を丸くした。

「悪いけど、もう行く」

「え、どこに」

「水族館」

「なら俺も行く!」

「でも……あいつらのこと追おうと思って」

「俺も着いていく。別に隣にいるくらい、いいよな?」

「……うん」

 早く岩井に気持ちを伝えたい。
 もうやめる。タイミングを待つのも、周りを気にするのも、好きって言われるのを待つのも。


 岩井を追って水族館に来た。家族連れやカップルばかりの空間に、男女グループを尾行している二人組。我ながら怪しいと思う。
 変な汗をかきながら一定の距離を保って着いていく。目の前の大きな水槽には目もくれず、岩井を見失わないように必死に見続けた。

「あっ岩井。そういえば一ノ瀬は誘わなくてよかったの?」

「え!?」

 女子の口から出た俺の名前に、岩井は過剰に反応した。少し距離が近づいたせいで会話も聞こえる。

「ちょっと、やめなよ~! 岩井は何回も振られてるんだから。今日も断られたんじゃない?」

「え……そうなんだ」

「でもでも、最近はずっと一ノ瀬といるよね。まさか付き合い始めた?」

「……いや。付き合ってへんよ」

「なんだあ」

 どくんと心臓が嫌な音を立てた。途端に額に汗が滲み出てくる。
 あまりにも、岩井の言い方が冷たかった。はっきりと否定されたこともショックだったが、なにより聞かれて迷惑だと言わんばかりに低い声だった。

「じゃあ私と付き合う?」
 
「はあ!? え、小鳥遊さんってこいつのこと好きなの? 公開告白とか聞いてないんだけど!」

「まあ……岩井ならアリかなあーって」

(おいおい、断るよな?)
 小さな水槽の裏に身を潜めて、岩井と小鳥遊さんを交互に見る。
 青く薄暗い光の中で、彼女が恥ずかしそうに上目遣いで岩井の体に擦り寄る。周りはそれを見てウェーイと囃し立てた。
 ──なんですぐに断らないんだ?
 岩井は悩むように固まったまま、動こうとしない。
 どんどん汗が噴き出てくる。ここで俺が割り込まなければ、二人は付き合ってしまうのだろうか。
 我慢できずに水槽から体を離した途端、岩井が小鳥遊さんの肩を両手で優しく掴んだ。

「ご、ごめん……やけど、ノリで付き合うとか俺はできん。すぐ切り替えられへん性格やし」

「あははっ、こいつ真面目か?」

「やっぱモテる奴はちげーな。うらやま~」

 なんだかいたたまれない気持ちになって目を逸らす。すぐ隣にいた白川と目が合った。

「なあ一ノ瀬……もう追うのやめねぇ?」

「いいよ、白川はやめても」

「待って!」

 彼らを追おうと歩き出したところで、腕を掴まれた。

「離せよ」

「今のとか、見てて不快だったろ」

「いや、だけど」

「俺……腹立ってんの」

「え?」

 白川の唇が小刻みに震えている。それを隠すように、そこにきゅっと歯が立てられた。

「一ノ瀬にあんな好きって言ってたくせに、今日みたいな日に誘いもしないなんて……。喧嘩したのか知らねぇけど、好きなら誘うべきじゃん」

「それは俺も思った。でも、今回は俺が誘うべきだったから」

「そう……なのか」

「一ノ瀬!?」

 聞き馴染みのある声がして振り返る。岩井が驚いた顔で近づいてきた。──しまった。

「り、遼」

「なんでここに? 白川と二人きり?」

「そうだけど。一ノ瀬がひとりだったから、俺が着いてきた」

「あ……」

 ふと、白川に掴まれたままの腕を思い出す。慌てて振りほどいたがもう遅い。きっと見られてしまった。
 どうしよう。なにを言おうか。
 言いたいことは山ほどあるのに、いざ目の前にすると思うように口から出てきてくれない。
 逡巡していると、遠くで女子たちが岩井を探していることに気が付いた。

「あれっ、岩井は~?」

 かすかに聞こえた声に、岩井がそちらを振り返る。

「ごめん。ちょっとみんなに……」

 こんな状況で戻ろうとするもんだから、咄嗟に体が動いた。岩井の手を掴んで引き寄せる。

「行くなよ」

「──え」

「俺といるより、他の人といたい?」

「そ、そんなわけないやん」

「じゃあ俺と一緒に来て。もう……女子といるの、見たくない」

 岩井が戸惑ったように黒目を揺らした。それもそのはず、嫉妬を本人に伝えたのはこれが初めてだった。まさか女子と一緒にいるだけで俺が妬くなんて想像もしてなかっただろう。

「わかった。みんなに言うから待っとって」

「いい」

 白川が遮るように言った。溜め息をついて俺たちを交互に見たあと、代わりに俺があっち混ざるからと言い残して行ってしまう。

「おーい、俺のこと忘れてね?」

「白川! なにやってたの」

「置いてったのお前らじゃん~」

「あれ、岩井は?」

「行きたいとこあるらしいよ。ま、俺いるからいーでしょ」

 さすが、一軍のグループにいるだけある。自然に合流して注目を逸らしてくれたおかげで、女子たちは岩井を探すのをピタッとやめた。
(今のうちに行かなきゃ……)
 姿は見えなくなったが、まだ油断できない。

「行こ」

「えっ、ど、どこ行くん?」

「いいから」

 岩井の腕を引いて水族館の外に連れ出した。目的地は、数分ほど歩いたところにあるエメラルドビーチ。
 二人で美ら海水族館に行って、話をしながらご飯を食べて、夕方頃にこの海に来て気持ちを伝える。これが最初に考えたプランだった。──結局、ほとんど台無しになってしまったけど。
 階段を降りて砂浜を歩く。真っ白な砂に太陽が反射して眩しい。顔が焼けてしまいそう。
 エメラルドグリーンの透き通った海が視界いっぱいに広がっている。夕方に来られたら、夕陽がもっと綺麗にこの海を照らしたはずだ。

「ちょ、待って一ノ瀬。靴ん中に砂入ってまうよ」

 ここじゃダメだ。もっと歩いて端のほうに行かなければ。もう誰にも邪魔されたくない。
 岩井の声を無視してしばらく歩き、ようやく周りに人がいない場所に辿り着いた。

「い、いちのせ──おわっ!」

 振り返って正面から思い切り抱きつく。突然のことで驚いたのだろう、岩井の素っ頓狂な叫び声と共に俺たちは砂浜の上に倒れた。

「いったた……大丈夫?」

 勢いよく尻もちをついたせいで、きっと岩井はあちこちぶつけたはず。それでも痛い顔ひとつせず、下から心配そうに見つめられた。

「ふっ、心配するのは俺だと思うんだけど」

 岩井の体が、自分の体の下敷きになっている。短パンから露出した素足がぴったりと触れ合って、頬がじりじりが熱くなった。
 二人きりで体に触れていると自覚した途端にこれだ。心臓が痛いほど速く打ち始めて、恥ずかしさのあまり岩井の胸に顔を伏せる。
(やばいやばいやばい。どうしよう!)

「あ、ああの、一ノ瀬?」

 心臓が壊れそうなのは俺だけじゃなかったらしい。耳から聞こえてくる鼓動の音に、思わず吹き出した。

「あは、ははは……っ、やっぱ俺のこと好きなんじゃん」

 顔を上げたら、すぐ近くで目が合った。目尻まで真っ赤に染まっている。
 俺のせいでこんな顔をしてる。そう思うと、たまらなく嬉しい。岩井のことが好きだ。この赤くなりやすい顔も、俺を呼ぶ声も、素直で真っ直ぐでたまに子どもっぽい性格も──ぜんぶ欲しい。
 止めどなく気持ちが溢れ出てきて、やがて言わずには居られなくなった。

「好き」

「…………え」

 岩井の目がかっと大きく開いた。たった二文字が理解できないというように、目を揺らして驚いている。

「遼のことが好き。お前は?」

「お……っ、俺も、好きや。けど……一ノ瀬は、先輩のことが……」

「もうずっと前に諦めてる。ここに来る前に気持ちを伝えたのも、けじめをつけたかっただけだから」

「え、あ、え!?」

「あのとき遼は聞いてなかったけど、先輩に言ったんだよ。お前の……お前のことで頭がいっぱいだって」

 こんな恥ずかしいこと、本人に言うなんて。
 頬を染めた俺よりもさらに、目の前にある顔が赤くなった。

「……俺のことで頭がいっぱい……?」

「なのに先輩ばっか気にしてるし」

「せやから、それはっ」

「俺はもうずっとお前のことしか考えてねえの! さっきも小鳥遊さんとイチャついてんの見てめちゃくちゃ苛々した」

「うわあ……あかん、うれし……てか、イチャついてないて」

「付き合う? とか言われて揺らいでただろ」

 小鳥遊さんの告白をすぐに断らなかったということは、少しでも可能性があったんじゃないのか。

「揺らいでない。みんながおる前で、どうやって断ったら傷つけないか考えてたんや」

「ずいぶん優しいんだな。だいたい女子にモテすぎなんだよ」

「そ、そんなん言うたら一ノ瀬は男子にモテとるやん!」

「お前と白川だけじゃん」

「……さっき、白川と二人で水族館きたって聞いたとき、めっちゃヤキモチ妬いた。なんでもっと早く一ノ瀬のこと誘わんかったんやって、後悔した」

「本当は、朝に岩井を誘うつもりだったんだ。でもあいつらに誘われてすぐ行っちゃったから」

「ああーごめんなさい」

「別にもういい」

「……ずっと考えとった。好きになってもらえへんなら、もう諦めたほうが楽なんかなとか」

 俺ばっか好きなの、しんどかったんよ。と眉を寄せて吐露されて、胸がぎゅうっと掴まれたように痛くなった。
 少しでもそのつらさが消えてほしい。そう思ったら、いつの間にか顔が引き寄せられていた。

「っ」

 唇が触れ合う。太陽のせいなのか、顔の赤みのせいなのか、重なった粘膜が体と同じくらい熱い。
 はあ……とお互いに吐き出した息が震えていた。
 もっと触れたい。もっと触れてほしい。今までに感じたことがないほど強い欲望が、底からふつふつ湧いてくる。

「好き」

 また言ってしまった。
 ──ああ、そうか。今ようやく岩井の気持ちがわかった。
 こいつが「好き」と何度も何度も俺に伝えてきたのは、義務感でも付き合うためでもなく、感情が溢れてどうしようもなかったからなのだ。

「俺も……ほんまに、好きや。付き合ってくれへん?」

 何ヶ月も言われ続けてきた言葉に、初めて「うん」と返事をした。


 太陽が少し落ちてきた頃、ようやく俺たちは立ち上がった。ずっと同じ体勢のままいたせいで、背中が焼けてしまったらしい。ひりひりシャツに擦れて痛い。

「ごめん、ずっと上乗ってて」

「いや。めっちゃ幸せな時間やった」

 歩き出してからやっと、波の音が聞こえてきた。奥に人影がある。もしかしたら手を繋いで歩いてるのを見られるかもしれないが、今は離すことはできなかった。
 親指ですりっと何回も撫でられる。絡んだ指先を確かめるかのように。

「……付き合ってすぐ飽きたら、許さないから」

「はー!? 飽きるわけないやん!」

「てかさ、俺のどこが好きなの? 一目惚れとか言ってたけど」

 一目惚れってことは、いつか顔が見慣れたら飽きられるんじゃないのか。思えばスキスキ言われすぎて忘れていたけど、顔以外の理由を聞いたことがない気がする。

「うーん……全部かな。誰にでも良い顔しないでツンツンしてんのも可愛いし、さっぱりしてるように見えて実は情に厚いところとか、行動力があるところとか」

「……へえ」

 ちゃんと内面を見た上でも好きになってくれたんだ。
 嬉しくてきゅっと指先に力を籠めたら、岩井が謎にちらちら視線を送ってきた。

「な、なに?」

「一ノ瀬の好きなタイプは、大人っぽくて包容力があって落ち着いてる人やろ。自分で言うのも悲しいねんけど、俺にその要素ないやん」

「タイプはそうだけど」

「やっぱり」

「でも、それ関係なく好きになったってことは、ある意味すごいじゃん。今はその性格でよかったと思ってるよ。何回も救われたし」

「……うん。じゃあ、ええわ」

「あ、遼のお兄さんみたいな色気は出てくんのかな」

「来年! 楽しみにしとって。身長もっと伸ばすし筋肉もつけるし、一ノ瀬のことメロメロにさせたる」

「一年で変わんの?」

「変わるよ。一ノ瀬好みの男になるから」

「そのままでいいって」

 ゆっくり歩いてきたのにもう浜辺が終わってしまう。周りの人も増えてきたから、いい加減に手を離さなきゃいけない。
 名残惜しさを感じながら階段に座った。靴の中に入り込んだ砂を出す。
(もっと二人きりでいられたらいいのに)
 岩井も同じことを思ったのか、単に俺のことを見つめていたのか──、顔を横に向けたら目が合った。

「……今日は一緒の布団で寝る?」

 本当は昨日、布団の中で手を繋ぎたかった。正直にそう言ったら驚くだろうか。

「え!?」

「ふはっ、冗談だって」

「いや。まじで一緒に寝よ。電気消してから移動したらバレへん」

「……遼が俺の布団に入って来いよ」

「襲ってもええってこと?」

「いいわけないだろ!」

 真剣に返した俺に、岩井が吹き出して笑う。それに釣られて笑いが止まらなくなった。