花びらが舞う世界で、君の涙が未来を照らす

   * * *

 火の粉が夜空に舞い、キャンプファイヤーの周りでは、生徒たちが手拍子や歌に合わせて輪になっていた。

 その輪から少し外れた場所。

 キャンプファイヤーの灯りが届くぎりぎりのところに立っている麗衣を確認し、その近くで蓮を肩車からおろした。

 肩車の上から降りた蓮が、芝生の上で久しぶりの地面を味わうように足踏みをする。

 「ありがとう、優真」
 「うん?俺も楽しかったよ」

 近寄ってきた麗衣に返事をしながら伸びをする。

 「ねえ、優真」

 その様子をみていた蓮が、不意にまっすぐな声を出すから、振り返ると真剣な顔をして優真を見上げていた。

 「優真、お姉ちゃん泣かせたら、僕、許さないからね」

 その言葉に、優真は目を見開いた。

 驚きよりも、まっすぐすぎるその視線に、少しだけ戸惑って、麗衣の表情を伺った。
 麗衣も驚いたように固まっていて、優真はほんの少し頬を緩める。

 「泣かせないよ」

 はっきりと呟きちらりと、麗衣を見る。

 困ったようにこちらを見つめる彼女に、笑いかけてから、今度は蓮にまっすぐ向き合うようにしゃがんだ。

 「……麗衣は、俺を、救ってくれた人だからね」

 火の明かりに照らされたその横顔は、どこか決意がにじんで見えた。
 蓮は、安心したように満足げに頷いた。

 「うん。……それなら、許す」

 その一連のやりとりを見ていた麗衣は、思わず小さく笑ってしまった。

 「も〜……許すってなによ蓮。優真も何返してんの〜」

 蓮の手を繋ぎ、少し下を向いて笑う。

 ほんの少し優真の視線を感じたけれど、その視線に答えることはできなくて、ふわふわと視線を彷徨わせてから、曖昧に笑った。

 火の光が揺れるなかで、頬がほんのりと赤く染まっていた。

 ——それが焚き火のせいだけじゃないことに、自分でも気づいていた。

 (……ほんと、なんなのそれ)

 けれどその気持ちは、胸の奥に優しく灯っている。

 確かなものに手を伸ばす勇気は、まだちょっとだけ先でも。
 いまはこうして、ただ微笑み合うだけで、心は十分にあたたかかった。