花びらが舞う世界で、君の涙が未来を照らす

    * * *

 日が暮れると、秋の風が少し冷たくなった。

 昼間の賑わいが落ち着き、校舎の灯りがひとつ、またひとつと消えていくなか、校庭の中央に、ゆっくりと炎が灯された。

 後夜祭の始まりを告げるキャンプファイヤー。
 文化祭のすべてが幕を閉じたその余韻を抱くように、生徒たちや保護者が集まり、炎を囲む輪が広がっていく。

 燃え上がる火の粉が、星の瞬きと混ざるように夜空へと舞い上がっていった。

 麗衣は、盛り上がるその中心から少し離れた場所で、ひとつの光景を静かに見つめていた。

 視線の先では、優真に肩車をされた蓮が楽しそうに、キャンプファイヤーの周りではしゃいでいる。

 その二人の様子を微笑ましそうに見つめるクラスメイトたちに、不思議な気持ちになりながら、麗衣はその二人を見つめていた。

 炎の明かりに照らされて、ふたりの顔が赤く染まる。
 蓮は高い視界にはしゃぎながら、ぐるりと見渡して声をあげた。

 「うわっ、校舎の屋上まで見える!僕、でっかくなった気分!」
 「いい眺めだろ?」

 優真が笑いながら、蓮の足をしっかり支える。

 「このまま連れて帰ったら、遊園地のアトラクションってことで許されるかな」
 「それ、いい!お姉ちゃんも乗せられる?」

 その笑い声が、夜のざわめきの中で、やけにまっすぐ耳に届く。

 (なんでだろ……すごく、安心する)

 肩の上で笑う蓮の姿が、あまりにも無邪気で、麗衣は思わず目を細めた。
 あんな無邪気な笑い方を見ていられることが、なんだか夢の中にいるみたいで。

 文化祭特有のどこか現実じゃないみたいな空気に包まれて、ふわりと浮かんでしまったような気がした。

 そしてその下で支える人が優真であることに、不思議なくらい納得していた。

 風が吹いて、頬にかかった髪がさらりと揺れる。
 指先でそっと耳にかけながら、麗衣はその光景を胸に焼きつけるように、まばたきをひとつもせず見つめ続けていた。

 灯りに照らされて揺れるふたりの笑顔は、どこまでも遠くて、でもちゃんと自分のいる世界のなかにあった。