* * *
朝の校舎には、いつもと違うざわめきが満ちていた。
昇降口にはカラフルな立て看板、廊下にはクラスごとの装飾が並び、いつもの白い壁が一夜でお祭りの通りに変わっていた。
パンフレット片手に立ち止まる生徒の声、スピーカーから流れるBGM、カメラのシャッター音——
文化祭が始まる、そんな空気に包まれて、空の色まで少し浮かれて見えた。
2年B組——麗衣のクラスも、その中にあった。
ガーランドやペーパーフラワーが風に揺れる窓際、黒板には生徒たちの手で描かれたカフェ風のイラストとメニュー表。
昨日までと同じ教室なのに、今日だけは別世界みたいだった。
「麗衣、今日の髪型かわいいね。いつもストレートだから、新鮮かも……」
「えっ……ほんと?ちょっとだけ巻いてみたの」
慣れない髪型にほんの少しそわそわしていた麗衣は、ほっとしたように頬を緩める。
「うん、超似合ってるよ!いつもそうしてきたらいいのに!」
少し前までは、髪を整える時間なんてなかった。
鏡を見ることすら億劫だった日々が、どこか遠くに思える。
「……そっか、じゃあたまにはやってみようかな」
友達のまっすぐな笑顔が嬉しくて、麗衣は自然に笑顔になっていた。
「なにかを言わなきゃ、ちゃんと返さなきゃ」と身構えていた頃の自分とは違う。
気づけば、当たり前みたいにその輪の中にいることが、ただうれしかった。
朝の校舎には、いつもと違うざわめきが満ちていた。
昇降口にはカラフルな立て看板、廊下にはクラスごとの装飾が並び、いつもの白い壁が一夜でお祭りの通りに変わっていた。
パンフレット片手に立ち止まる生徒の声、スピーカーから流れるBGM、カメラのシャッター音——
文化祭が始まる、そんな空気に包まれて、空の色まで少し浮かれて見えた。
2年B組——麗衣のクラスも、その中にあった。
ガーランドやペーパーフラワーが風に揺れる窓際、黒板には生徒たちの手で描かれたカフェ風のイラストとメニュー表。
昨日までと同じ教室なのに、今日だけは別世界みたいだった。
「麗衣、今日の髪型かわいいね。いつもストレートだから、新鮮かも……」
「えっ……ほんと?ちょっとだけ巻いてみたの」
慣れない髪型にほんの少しそわそわしていた麗衣は、ほっとしたように頬を緩める。
「うん、超似合ってるよ!いつもそうしてきたらいいのに!」
少し前までは、髪を整える時間なんてなかった。
鏡を見ることすら億劫だった日々が、どこか遠くに思える。
「……そっか、じゃあたまにはやってみようかな」
友達のまっすぐな笑顔が嬉しくて、麗衣は自然に笑顔になっていた。
「なにかを言わなきゃ、ちゃんと返さなきゃ」と身構えていた頃の自分とは違う。
気づけば、当たり前みたいにその輪の中にいることが、ただうれしかった。



