花びらが舞う世界で、君の涙が未来を照らす

    * * *

 初めて花びらを見た時は、春でもないのに——そう思って目をこすったけれど、その日をキッカケに、花びらは何度も、何度も、麗衣の視界に現れた。

 そして、何度も目にするうちに、気づいてしまった。

 あれはきっと——隠している気持ちが、かたちになって現れているんだ。

 誰かが困っているとき、苦しさを隠しているときに限って、花びらは明確にその子の周りに落ちていく。

 だから今、教室の隅で机に突っ伏している子の肩のあたりから、そっと舞い落ちる花びらを見たとき、麗衣はためらわずに声をかけた。

 「ねえ、大丈夫?」

 びくっと肩が揺れたあと、顔を上げたのは、文化祭の準備でいつも裏方を頑張ってくれていたクラスメイトだった。

 「あー……大丈夫。準備しなきゃね」

 彼女の言葉にも、またひとひら、花びらが舞った。

 「無理しすぎないで。私、ちょっと代わるよ。今日は放課後残れる日なんだ」
 「ありがとう……。実はちょっと頭が痛くて」

 彼女がほんの少しだけ困ったように笑ったとき、今度は何も落ちてこなかった。

 原理は分からないけど、人の苦しみが目に見えてわかるようになった。

 ——誰かが苦しさを抱えたまま笑っているのなら、それに気づけるのなら、あのとき私が救われたように、今度は私が差し伸べたい。

 麗衣は、そんな気持ちが、少しずつ自分の中に根を張っているのを感じていた。