* * *

 視線を教室に戻すと、優真が黒板の前で、何かを指さしながら友達に話しかけていた。

 その表情は、いつも通りのやさしい顔で、まるで相手の緊張までほどいてしまいそうな、そんな穏やかな笑みだった。

 その笑顔を見て、胸がふっとあたたかくなる。

 ——ちゃんと見てくれて、救ってくれた人。

 ただのクラスメイトなんかじゃないことは、きっともう、ずっと前からわかってた。

 優真のことを考えると、胸の奥がほんの少しだけ、あたたかくなる。

 誰にも言えなかったことを、知ってくれている人。
 他の誰にも見せていない自分を、知ってくれている。

 この感情を明確に言葉にすることはできないけれど、優真は麗衣にとって、特別な人なんだと思っていた。