花びらが舞う世界で、君の涙が未来を照らす

    * * *

 その日以来、麗衣は一度も学校に来ていない。

 夏休みに入ってからも、一度も会うことはなく、不安は募るばかりだった。

 どうしてるんだろう。
 ちゃんと無事に、暮らせているだろうか。

 ——気になって仕方がなかった。

 ただ、顔を見たかった。
 それだけでいい。ひと目見て、安心したかった。

 ——だから……

 「おはよ〜」

 あっけらかんと聞こえた、懐かしくすら聞こえる柔らかな声。

 教室のドアからその声が覗いた瞬間、心臓が跳ねた。

 視線の先、何気ない顔で立っていたのは、麗衣だった。

 「麗衣!?久しぶり!」
 「急に来なくなるから心配してたんだよ!? 大丈夫!?」
 「……あはは、ごめん!ちょっとバタバタしてた〜〜」

 あっという間に囲まれる、人気者の彼女。

 その姿は、夏休み前に学校で見た姿と、何ひとつ変わらないように見えた。

 少し時間が経って、ようやく自席についた麗衣に、優真は声をかけた。

 「おかえり」

 顔を上げた麗衣は、制服の袖を直しながら、ほんの少しだけ恥ずかしそうに笑った。

 「優真。ただいま」 

 その笑顔を見た途端、喉の奥に詰まっていた何かが、すっとほどけた気がした。

 (……よかった。元気そうだ)

 それだけで、胸の奥がじんわりとあたたかくなる。

 1ヶ月以上ぶりに見る彼女の顔は、どこかやわらかくなっていた。

 笑顔を作るたび、いつも吹き出すように舞っていた彼女の花びらは、今日は、どこにも見えなかった。

 花びらのない彼女の笑顔は、こんなにも澄んでいて、綺麗なんだと。

 目の前で笑う彼女を見ながら、ぼんやりと、そんなことを思っていた。