* * *

 「久しぶり、優真」
 「おはよ。今日も暑いな〜」

 すれ違うクラスメイトと明るく挨拶を交わしながら、教室の中へと足を踏み入れる。

 夏休みが明けた1日目。

 少しの新鮮さはあっという間に薄れ、いつも通りの明るい1日が始まる。

 ——けれど、教室の後ろを通りかかる一瞬だけ、自然と視線が揺れた。

 窓際の、後ろから二列目。

 その席に誰も座らなくなったことに違和感も消えた頃だった。

 「今日も……来ないのかな」

 小さくつぶやいた声は、自分にしか聞こえないように喉の奥で消えた。

 日直が名前を呼ぶたびに訪れる静けさは、少しずつ教室に馴染みつつある。