* * *

 「いらっしゃい!待っていたのよ。とりあえず入って」

 優真の家に着いたとき、彼の家族は何も聞かなかった。

 「お風呂、あっためてあるからね」と、ただ、穏やかに、やさしく迎えてくれた。

 ——親って、どういうものなんだろう。
 迷惑……だと思われていないのだろうか。

 玄関に並べられたスリッパを前に、麗衣は立ち止まった。

 「どうぞ」と促されても、なんとなく体が動かず、声も小さくなってしまう。

 お礼もぎこちなくて、笑顔も引きつっていた。

 「優真兄ちゃんの家大きいね!」
 「だろ?リビングで遊ぶ?」

 蓮はすぐに懐いて部屋に入っていったけれど、自分だけが、どこか場違いな気がしてならなかった。

 そんな様子に気づいたのか、優真のお母さんがふと笑って、声をかけてくれる。

 「うちは古い家だから、落ち着かないかしら?」

 可愛らしくも穏やかな微笑みに、優真に似たものを感じて、麗衣は小さく首を左右に振った。

 「いえ、お邪魔します」

 そう言って一歩踏み込むと、温かく落ち着くリビングへと案内された。