花びらが舞う世界で、君の涙が未来を照らす

    * * *

 「麗衣、珍しくしっかり怒られてたね〜〜」
 「無断欠席とは、なかなかやるね……!」

 席に戻った後、待ってましたと言わんばかりに集まってきた友達に茶化され、ヘラっと笑って返す。

 「あはは、恥ずかしい。でも、言い訳がなかったのは本当だし」
 「ってことはサボりってこと⁉︎ やだ、不良じゃん!」
 「私の愛しの麗衣ちゃんが反抗期かも〜!」

 変なテンション感のまま盛り上がる友達に、いつもの調子で笑い返す。
 気まずくさせないようにしてくれてるのが、なんとなく伝わってきて、ありがたい。

 そのまま話題は自然と移りかわっていく。

 「てかさ、うちのママ、最近ダンス動画にハマっててさ」
 「え、何それ可愛い〜♡一緒に踊ったりするの?」
 「実は昨日、踊った……」
 「えっ、まじ⁉︎見せて見せて〜!」

 動画に映る二人の親子は楽しそうに笑っていて、お互いに大切に思っていることが伝わってきていた。

 「うちはそんな仲良くできないな〜。勉強しろってうるさいし」
 「分かる。うちもそんな感じ。放っといてほしいよね」

 いつの間にか友人たちは母親トークで盛り上がっていた。
 きゃっきゃと笑い合うその輪の中に、特別な話は何もない。

 麗衣は、スカートの裾をぎゅっと伸ばしながら、小さく俯いた。

 愚痴すら、羨ましいと思ってしまった。
 そんな自分が情けなくて苦しかった。

 (……いいな)

 ノートの端にふわりと、小さな桜色の花びらが落ちる。

 誰の目にも触れないその感情は、言葉にするには幼すぎて、でも笑ってごまかせるほど軽くもなかった。

 (うちは、ちょっと違うだけ……)

 揺れる気持ちを誤魔化すように、麗衣は自分の引き出しをそっと開けた。

 三日も休んだんだ。

 きっといろんなプリントが突っ込まれていて、ぐちゃぐちゃになっている——そう思っていたのに、目に飛び込んできたのは、意外な光景だった。

 中に入っていたのは、整えられたクリアファイルと、返却されたノートが数冊だけ。

 配布物はひとまとめにされ、それぞれに提出日や内容が付箋で丁寧に貼ってある。

 (……これ、誰が)

 付箋に書かれた、少し癖のある整った文字を見て、すぐに思い当たった。

 ——見覚えのある字。

 ちらりと教室の向こうに視線を送る。
 その先では、優真が、数人の男子と談笑しながら、楽しそうに笑っていた。

 背中越しでも伝わってくる、変わらない柔らかさ。
 その姿を見た瞬間、胸の奥にふわりとしたあたたかさが灯る。

 (……ありがとう)

 声には出さなかったけれど、その言葉が心の中で静かに転がった。

 それだけで、ほんの少し、気持ちがほどけていく気がした。