* * *

 夜が明けきらない部屋に、小鍋の蓋がかすかに揺れる音が響いた。

 麗衣は、火を止めておたまを握り、温かい湯気の立つお粥をそっと器によそう。

 「蓮、ごはんできたよ。……食べられそう?」

 返事はなく、ソファの上で毛布にくるまったままの弟が、かすかにうなずくのが見えた。