* * *

 その日以降も、優真に心配されることが増えていった。

 「目の下、ちょっとクマできてるんじゃない?」
 「最近、昼休みひとりで出てること、多くない?」

 それはどれも、ふわっとした口調で、咎めるような言い方ではなかった。

 優真が心配してくれているのは分かっている。
 そういう人だということも、ちゃんと知ってる。

 だけど正直それは、麗衣が望んでいるものではなかった。

 むしろ、気づいてほしくないものに、彼だけが迷いなく近づいてくるようで、それが麗衣には怖かった。

 「大丈夫だよ」
 「寝不足なだけ。気にしないで」

 決まってそう返せば、優真はそれ以上は詮索してこなかった。

 でも、話しかけられていないときでさえ、ふとした瞬間に視線を感じる気がして、麗衣は、次第に落ち着かなくなっていった。

 教室のざわめきのなかで、なんとなく、呼吸が浅くなるのを感じた。

 優しいはずの言葉が、どうしてか責められているみたいに響いてしまうのは、自分のせいなのか。

 それとも、あの目が、本当の自分を見つけてしまいそうだからか。

 麗衣はなんとなく、優真を避ける日々が続いていた。