零烙襲撃の夜から2日後の朝。おかゆを食べていた魚子は、うっすらつわりが楽になっている気がしていた。

(もしかして異能が出てきたから?)

 魚子は異能が黄龍の加護であるのは知覚しているが、まだピンときていない。
 こんな自分が目覚めて良い代物なのかと聞かれたら、返答に困る自信がある。

「女御様! 大変でございます!」

 おかゆを食べ終えた魚子の元に、緑色系の色合いをした十二単を纏った女房がすっ飛んでくる。

「梅壺更衣様がご懐妊あそばされたと……」
「環子が?!」
「さようでございます……」

 報告に訪れた女房の頭は冷や汗を垂らしている。だが魚子の右側で控えている透子は、おっとりとした空気を崩してはいなかった。

「おそらく、梅壺更衣様のご懐妊が本当だとしてもぅ……御上の子ではございませんと思いますぅ」
「透子さん?」