「そなた、熱が昂っておるぞ。病か？」

　不意に後ろから額を触られたせいで、魚子は肩をびくっと跳ね上げてしまった。

「初い(うい)反応だな。可愛らしい」
「なっ……だって御上がいきなり額を触れるから……」
「ふふ、そういった反応が見たかった。話を戻すと熱はなさそうだな。もしや照れておるのか？」
「うぅう……指摘しないでください……」

　鯉白にいいようにからかわれて煽られるたびに、身体を熱くさせるのをやめたい。と思っていても身体はもっと熱をあげてしまう。

「ふふ……可愛い。愛しておるぞ、魚子」
「ぁ……」

　そっと右耳の近くでささやかれ、どきっと胸が爆発するかのような鼓動を見せた時。透子が宴の準備が整ったとおっとりとした口調で知らせに来てくれた。
　あっという間に食事も届き、お膳が並べられていくのと同時に魚子の身体で異変が起こる。

「?!　……ぅっ……」

　強飯(こわいい)の匂いが鼻腔をついた瞬間、何とも言えない気持ち悪さが魚子の胃全体に充満する。
　あまり気持ち悪すぎて、まるで胃の中に収まっているものすべてが吐き出されてしまうのではないかと感じるほどだった。

「どうした魚子?!」
「っ、気持ち悪くて……」

　異変に気が付いた鯉白が、魚子を後ろから抱きかかえた瞬間、彼女を中心に黄金の光が放たれた。