透子のほんわりとした雰囲気は、遠縁にあたる鯉白が醸し出す、掴みどころのないものと間違いなく似ている。
 こんな彼女だが面倒見は良いので頼れる存在だ。

「では女御様、続き、どんどん書いていきましょうお~」
「はい、頑張ります……!」

 それにしても長年筆を持っていなかったせいか、右手の震えがどうにも止まらない。

(右手が疲れてきた……)

 休憩を言い出そうにも、透子の赤い瞳を見ていると、期待を受けているようにも想像してしまう。
 腕の疲労感と震えに耐えきってかな文字すべてを書き終え、透子に紙を渡した。

「まぁ~! 可愛らしくて美しい文字ですわぁ。さ、もう一度書いていきましょう~!」
(え、もう1回するの?!)

 魚子は嘘でしょぉ~?! と心の中で叫びながら、再び筆を取ったのだった。