◇ ◇ ◇
魚子の入内により、弘徽殿以外の殿舎では大混乱が続いている。
既に入内していた環子を含め3名の妃は嫉妬に駆られ、怒りをにじませていた。鯉白の周囲こそ平常心を保っている貴族達の中でも帝が蜥蜴姫をめとった。あり得ない。死ぬおつもりか! などと怒号が沸き起こっている。
梅壺では濃い暖色系の袿を身に纏っている環子が、右親指の爪を噛みながら、思案していた。
「あの蜥蜴……どうしてくれようかしら……」
どうにかして陥れなければ、寵愛は魚子に傾く一方であるのは十分認識している。
最初に環子が考えたのは、先に入内していた妃達・宣耀殿女御と梨壺女御と共に魚子を陥れる作戦だった。しかし両者とも女御の位ゆえか、提案なぞ受け入れる気はないと突き返されたのである。
(あの2人に女御が協力してくだされば、味方も増えて私もちょっとは楽になれたのに……!)
やはりここは後宮。妃同士が協力するのは難しい事であるのを環子は如実に思い知らされる。
どう魚子を陥れるか。次に考えたのは賊を煽って襲撃させる強硬手段だったが、弘徽殿は後宮内でも特に警備が厳重で容易に近づけない。
今も試しに女房を向かわせてはいるものの、未だに返って来ない。
(あの蜥蜴に御上の寵愛を奪われてなるものか!)
魚子の入内により、弘徽殿以外の殿舎では大混乱が続いている。
既に入内していた環子を含め3名の妃は嫉妬に駆られ、怒りをにじませていた。鯉白の周囲こそ平常心を保っている貴族達の中でも帝が蜥蜴姫をめとった。あり得ない。死ぬおつもりか! などと怒号が沸き起こっている。
梅壺では濃い暖色系の袿を身に纏っている環子が、右親指の爪を噛みながら、思案していた。
「あの蜥蜴……どうしてくれようかしら……」
どうにかして陥れなければ、寵愛は魚子に傾く一方であるのは十分認識している。
最初に環子が考えたのは、先に入内していた妃達・宣耀殿女御と梨壺女御と共に魚子を陥れる作戦だった。しかし両者とも女御の位ゆえか、提案なぞ受け入れる気はないと突き返されたのである。
(あの2人に女御が協力してくだされば、味方も増えて私もちょっとは楽になれたのに……!)
やはりここは後宮。妃同士が協力するのは難しい事であるのを環子は如実に思い知らされる。
どう魚子を陥れるか。次に考えたのは賊を煽って襲撃させる強硬手段だったが、弘徽殿は後宮内でも特に警備が厳重で容易に近づけない。
今も試しに女房を向かわせてはいるものの、未だに返って来ない。
(あの蜥蜴に御上の寵愛を奪われてなるものか!)



