◇ ◇ ◇
その日の夜。内裏は大混乱に包まれていたが、ひとつだけ厳かで幸せな空気に満ち溢れていた区画があった。
そこは弘徽殿。七殿五舎の中でも最も格式高い建物で、中宮、皇后の殆ど達が居住していた場所。弘徽殿を賜る事は帝からの寵愛の証ともされ、妃にとっては憧れとなる場所でもある。
その弘徽殿を賜る事になったのが、魚子だった。
(緊張してしまう……)
鯉白が用意した、青色系を基調とした豪華な十二単をまとい、弘徽殿入りした魚子はなぜこうなったのかを振り返る。
まず鯉白と肌を重ねた後、なし崩しに過去を白状した結果、彼の目の色がガラリと変わった。
――このままではそなたの命が危ない。今すぐにでもそなたの妹達を排除したいが……これには入念に準備を進めたいと思う。
こうして魚子は最も格式高い弘徽殿へ、それも更衣ではなく女御の位として入内する事になった。当然父光正は大納言ゆえに更衣から入内が当たり前とされてきた為か、鯉白の周囲に侍る大臣や女房達は賛否両論ざわめいていた。
だが、彼らは鯉白の一喝で静まる。
――彼女こそが、我が皇龍一族を救う者に他ならない!
そう高らかに宣言した鯉白は、秘密裏に調査し見つけたものや、皇龍一族に代々伝わる古文書などを大臣らに見せる。そこには確かに黒い蜥蜴のような鱗を持つ者は、黄龍の加護を受ける候補である事を示す文言が記されていた。
これにはさすがに鯉白に逆らう事は出来ない。
(すごかったなあ、御上は本当に用意周到だわ)
その日の夜。内裏は大混乱に包まれていたが、ひとつだけ厳かで幸せな空気に満ち溢れていた区画があった。
そこは弘徽殿。七殿五舎の中でも最も格式高い建物で、中宮、皇后の殆ど達が居住していた場所。弘徽殿を賜る事は帝からの寵愛の証ともされ、妃にとっては憧れとなる場所でもある。
その弘徽殿を賜る事になったのが、魚子だった。
(緊張してしまう……)
鯉白が用意した、青色系を基調とした豪華な十二単をまとい、弘徽殿入りした魚子はなぜこうなったのかを振り返る。
まず鯉白と肌を重ねた後、なし崩しに過去を白状した結果、彼の目の色がガラリと変わった。
――このままではそなたの命が危ない。今すぐにでもそなたの妹達を排除したいが……これには入念に準備を進めたいと思う。
こうして魚子は最も格式高い弘徽殿へ、それも更衣ではなく女御の位として入内する事になった。当然父光正は大納言ゆえに更衣から入内が当たり前とされてきた為か、鯉白の周囲に侍る大臣や女房達は賛否両論ざわめいていた。
だが、彼らは鯉白の一喝で静まる。
――彼女こそが、我が皇龍一族を救う者に他ならない!
そう高らかに宣言した鯉白は、秘密裏に調査し見つけたものや、皇龍一族に代々伝わる古文書などを大臣らに見せる。そこには確かに黒い蜥蜴のような鱗を持つ者は、黄龍の加護を受ける候補である事を示す文言が記されていた。
これにはさすがに鯉白に逆らう事は出来ない。
(すごかったなあ、御上は本当に用意周到だわ)



