「何度も言う。それは醜いものではない。美しいものだ」
「うそ……うそ! だって皆醜いって、呪われるって……!」
「余はそうは思わない」

 凛々しい真剣な顔が一瞬にして視界を覆うと、魚子の唇の上に柔らかな感触が乗っかって来た。その事実を理解するのに、ちょっとした時間を要してしまう。
 その間、彼の筋肉質な胸に手を当てて距離を取ろうとしても、身体は離れてくれない。それどころか唇全体に与えられる力が増していき、胸の奥に宿った熱も昂っていく。

「んっ、んっ――!」

 塞がれているのは口だけなのに、呼吸がうまく出来ない。空気を欲している胸の中ではじんわりと温かさが広がっていく感覚がある。
 どうして御上が、口づけしてまで――……と思考している途中で、彼の唇は名残惜しそうに離れていった。

「わかったか? 余の気持ちが」
「っ、はあ……御上……」

 魚子を見下ろす鯉白の瞳は青空のように澄んだ色をしていて、濁りは一切ない。

「最初は、ただ皇龍一族の為と考えていた。だが今は違う。こういった事をしたいと思ってしまう程に」
「お、御上……」

 もう一度鯉白の唇が魚子の唇に触れる。今度は先端が重なり合うように触れる程度の軽いもの。それだけなのに前よりも唇が熱くたぎっている。
 真っすぐな青い瞳と視線が合うと、彼は優しい微笑みを返してくれた。

(御上が……私を見て微笑んでいる……)

 その時、魚子の胸の奥がきゅんと締まったような感覚がした。
 勿論こんな感覚は初めての事で、鱗に覆われた両頬が熱くなっていき、心臓はどくどくと激しく音を立てる。