「! お、御上……!」

 彼の見開かれた青い瞳はさんさんと光を放っていて、魚子から見えるとまるで宝玉のようにも見えてしまう。

「あ、御上……」
「その布、持っていてくれてよかった。魚子、安心せよ。余がそなたを助けに参った」
「!」

 彼の穏やかな言葉が、脳天へ雷のような衝撃をもたらす。

「あ……わ、私は蜥蜴です。放っておいてください」

 口から飛び出たのは猜疑心が放った、本音とは真逆の言葉だった。

「なぜだ? 余はそなたがこんなにも大事なのに?」

 物置小屋につかつかと入ってきて、座り込んでいた魚子の右手を握る鯉白の目は更に輝きを増す。それに周囲には異能の気が、充満する煙のように漏れ出した。
 こんなにも高貴な人がなぜ。と猜疑心がますます膨らんでいくばかりなのに、胸裏の片隅には嬉しさが輝きを放ち始める。

「うそです、そんなの」
「嘘ではない。ほら、余が触れている所……温かいだろう?」
「ですけどっ……! なんで私に構うのですか! 私は醜い蜥蜴なんです、あなたのような高貴なお方が触れるべき存在ではないのです……!」

 拒絶の叫びが口から放たれていくと、驚きで止まっていたはずの涙が再びあふれ出した。