「あの、どなたでしょうか?」
この後宮は、東にある大陸のそれとは違って男性の立ち入りが許されている。したがって女房の元へ夜這いに来る者も少なくない。
すると若い男性は瞬時に身体を透明に変化させ壁代をすり抜け、魚子へその姿を見せる。暗がりの夜でもわかる程に美しく輝く銀髪に、深い空のような青い瞳。目つきは清流の如き穏やかさでまっすぐに魚子を捉えている。
そして白い御提直衣に紅い袴、黒い冠を着こなす姿からは、どこか浮世離れしたような空気さえ感じられた。
「余はそなたをずっと探していた……会いたかった、魚子」
「え、あ、あなたは……」
「余は鯉白。この国を統べる帝である」
突如登場した帝に、魚子の視界がぐるりと一周した。なぜそのような高貴な方がここに現れ自分の名を呼んでいるのか。その事実を全く飲み込めない。
「お、御上‼ 御上がなぜ!」
「しっ。静かに。結界を張ろう」
鯉白が右手の人差し指を立てると、周囲がほんの一瞬だけ銀色に光った。
「驚かせてしまってすまないな。頭を下げずとも良い……ああ、会いたかった……」
鯉白の表情は如何にも感慨深そうなもの。喜びを全身で表現するように、魚子を真正面からそっと抱きしめる。
「え?」
いきなり男の腕に抱かれた魚子の脳内は驚きと疑問であふれかえった。ちらっと横目で鯉白を見てみると彼は慈愛に染まった表情を見せる。
「ま、待ってください! 離してください……! どうしていきなり……!」
「おっと、いきなり女人を抱き締めるのは無作法だったか」
「や、そう言う事ではなく! あの……離してください……!」
ようやく彼の腕から解き放たれた魚子は、胸に手を置いて荒れた息を整えようとする。
この後宮は、東にある大陸のそれとは違って男性の立ち入りが許されている。したがって女房の元へ夜這いに来る者も少なくない。
すると若い男性は瞬時に身体を透明に変化させ壁代をすり抜け、魚子へその姿を見せる。暗がりの夜でもわかる程に美しく輝く銀髪に、深い空のような青い瞳。目つきは清流の如き穏やかさでまっすぐに魚子を捉えている。
そして白い御提直衣に紅い袴、黒い冠を着こなす姿からは、どこか浮世離れしたような空気さえ感じられた。
「余はそなたをずっと探していた……会いたかった、魚子」
「え、あ、あなたは……」
「余は鯉白。この国を統べる帝である」
突如登場した帝に、魚子の視界がぐるりと一周した。なぜそのような高貴な方がここに現れ自分の名を呼んでいるのか。その事実を全く飲み込めない。
「お、御上‼ 御上がなぜ!」
「しっ。静かに。結界を張ろう」
鯉白が右手の人差し指を立てると、周囲がほんの一瞬だけ銀色に光った。
「驚かせてしまってすまないな。頭を下げずとも良い……ああ、会いたかった……」
鯉白の表情は如何にも感慨深そうなもの。喜びを全身で表現するように、魚子を真正面からそっと抱きしめる。
「え?」
いきなり男の腕に抱かれた魚子の脳内は驚きと疑問であふれかえった。ちらっと横目で鯉白を見てみると彼は慈愛に染まった表情を見せる。
「ま、待ってください! 離してください……! どうしていきなり……!」
「おっと、いきなり女人を抱き締めるのは無作法だったか」
「や、そう言う事ではなく! あの……離してください……!」
ようやく彼の腕から解き放たれた魚子は、胸に手を置いて荒れた息を整えようとする。



