醜い蜥蜴姫は短命帝に見初められ、龍后となる。~御上の子を身ごもったら、国の守護龍の加護に目覚めました~

 そして今。梅壺内にて環子は座った姿勢のまま、檜扇の裏でいら立ちをあらわにしている。環子は自分の美貌に自信を持っているがために、後宮内では最下層となる更衣の位には未だに納得していない。
 なお、大納言の娘はよほどの事がない限り更衣が一般的。大臣の娘など高貴な者でも、最初は女御からが決まりだ。そして子を孕み、世継ぎの男子を産めば皇后へ、女子を産んだ場合は中宮へ上り詰める事が出来る。

「思ったよりも狭いのね、弘徽殿かせめて麗景殿を賜りたかったのだけれど」

 高望みは出来ない立場なのだが、環子には理解できないようだ。その様子を魚子は変わらないなあ。と心の中でつぶやきながら遠目から見つめている。

「どうして私が更衣なのかしら……」

 と唇を嚙みながら呟き続ける環子から離れた場所では、女房達がひそひそと話をしていた。

「実の姉妹なのに、どうしてこんなに容姿が違うのかしら。お気の毒ねえ」

 向けられる女房達の痛々しい視線が身体に刺さっても、魚子は無の境地だった。
 環子の入内に伴う儀式が一通り終了した後、魚子は与えられた房で休息を取る事にする。房と言っても元は物置だったらしいが、休息場所があるのはありがたい事だ。

「いるか?」
(……?)

 突如、若い男性の声が魚子の後頭部へと向けられる。