一週間後に、死ぬ友達へ

 私はその違和感を隠しきれなかった。
「ねぇ、悠太。なにか、私に隠してな~い?私、勘で分かるから」
幼馴染の悠太とは、小さなころから仲がよく、よく話していた。
でも、最近はあまり話しかけてこない。
「隠してねぇよ。七海、気にしすぎだって」
ヘラヘラ笑いで訂正してくる。どうせ、すっごくすっご~く大事なこと隠してる。
「好きな子できた?嘘!教えて!誰にも言わないから!」
「いないよ。七海、お前は友達だけど、女だろ?すぐ言いふらすし」
そんなことないし!すぐ言いふらさないし!
「あっ、舞奈が呼んでるじゃないか。お前、友達ファーストだろ?」
なんなのよ、あいつ。最近変だけど。
「どうしたの?舞奈」
悠太に押されて、一瞬だけビクッとした。
そんな私を見て、けらけら笑っている。本当にむかつく。
「七海ちゃん!どうして、悠太くんと仲良くしてるの⁉」
「は?幼馴染だから。別におかしくないでしょ。悠太は友達だし」
舞奈は悠太に思いを寄せている。「優しいから好き」らしい。
私は、舞奈のことが苦手だ。悠太に近づいただけでも怒られる。
特に悠太に好意を抱いているわけではないのに、舞奈は私のことを「敵」と認識する。
一応友達だから、仲良くしてくれているけど、悠太の話となるとすぐ興奮して、悪口とかも言う。
『マジで、最近はさ~、優華とか莉彩が悠太くんにベタベタでさ~!』『あいつらムカつく』
『七海もそう思うでしょ~?』『悠太くんは私のもんだから~』『幼馴染とかいいな~』
『あれじゃん、少女漫画じゃん!』『ズルすぎ~!超うらやましい。』
舞奈は、このクラスの「総長」といったところだろうか。喧嘩が強くて女の子のルールブックでもある。
見た目は可愛いけど性格はすごく悪い。気に入らないことがあると、すぐその子を仲間外れにする。
「七海ちゃ~ん?好きになってない?大丈夫そう?」
我慢できなかった。悠太と話すたびにこうだ。私はそのイライラを舞奈に思い切りぶつけた。
「悠太のことは好きじゃない!普通に友達だし。マジでそういうのやめてくれる?」
「えっ、そんなこと言っちゃうの?もう友達でも何でもないや。でも…」
「馬鹿だね、舞奈。それ、ずっと繰り返したら嫌われるよ」
「私、嫌われてないから~!むしろ男子に好かれてるから~!スポーツ系のぶりっ子よりも~」
舞奈が私の体を突き放した。思わず転んでしまう。舞奈が上から覗き込んでくる。
まるで、ゴミでも見るような目だった。
私に「可愛いね~!友達になろっ」と言ってくれた舞奈はどこに行ってしまったのだろうか。
「舞奈って、ずるいね。どこまでもぶりっ子だね」
「七海ちゃんって、ヤバいね。超馬鹿だね。男子を『使う』とか考えられない脳なんだね~」
舞奈はそう言うと、悠太の方へと駆けていった。
「悠太くんっ!この前、おすすめしてくれた漫画、読んだよ~‼」
「七海は?」
「えっ!どうしたの?七海…ちゃん?そこにいるよ。うわあっ‼転んでる!大丈夫?」
「アンタがやったんでしょ、舞奈。転ばせたんでしょ、私を!」
「そんなことしてないよ~!転んだなら、保健室行けば~?」
そのとき、舞奈が「ひいっ」と短い悲鳴をあげた。悠太の目が、恐ろしかったからだ。
「舞奈がやったんだな。転ばせたんだよな?二度と七海に近づくなよ!」
「サンキュ」
「オッケー。先生にも言っといた。啓をいじめたのは、舞奈だろ?」
「そうそう!舞奈、残念だね。全部バレちゃったよ」
舞奈は、悔しそうに唇をかみしめた。