今呼ばれた人とカルロッタは会議室に移動する。
室内の蛍光灯が淡く灯る。壁一面を占める大型モニターの隣には、いつも通り大きなホワイトボードが置かれている。大型モニターには、日の出学園の校舎全景が映し出されている。輪郭を浮かび上がらせる白い光が、会議室全体に緊張感を張り巡らせた。
カルロッタはゆっくりと前へ歩み寄る。

「みなさん、お疲れさまでした。これからお伝えするのが、新たな任務の詳細です。今回は、前に映っている、日の出学園を潰すことが任務となります。まず、計画の順番について説明します。始めに、中等部を潰すところから始めるのですが、その際に一番外部とも学校内の生徒とも教師とも繋がっている生徒を片付けてから、輪が乱れていくところを突き、中等部を潰し、そこから学園全体を潰していく、という計画になっています」

モニターがスリップし、まずは学園全体の鳥瞰図へ。敷地面積、門の一、自動警備システムの稼働時間帯などが表示される。次いで校舎の階層図と非常口ルート、監視カメラの資格ポイントが順に表示された。カルロッタは隣のポインターを手に取り、落ち着いた声で説明を添える。

「日の出小中高一貫校。校舎は北館と南館、中央館の三つに分かれ、北館が中学校、中央館が小学校、南館が高校となっています。警備員はいないようですが、夜間の窓のロックは厳重です。また、昼は基本的にロックがかかっているところは無いみたいですね」

そう言って、次は中等部1-Cのスチルを拡大表示した。生徒の一人一人の顔に四角い識別枠が付き、やがてその一枚が強調される。

「始めのターゲットは仁藤進。中等部1-C所属、12歳。父親は刑務所にいるため、実質母子家庭ですね。弟が7人おり、趣味が筋トレの割に体育よりも家庭科のほうが得意ということからかなり人気があるみたいですね。特に教師に」

マリンは身を乗り出して問う。

「問題児じゃないんだね。すっごくいい子だ。なんで?」

カルロッタは少し黙り、静かに答えた。

「セザン様からの指示です。仁藤進の知人などが、あなた方それぞれの目的に関わってくるとのこと。詳しい理由は公表できませんが、単なる報酬ではないようです」

一瞬、会議室の空気が重く沈む。

「続いて、今度の仁藤進を切り刻む際の条件をお伝えいたします」

そう言うと、画面に映っているページを変える。
・仁藤進以外を切り刻む行為は禁止
・瀕死状態に留める行動は可(任務達成扱い)
・仁藤進を確実に動けない状態にすること

「おけ丸水産ー」

マリンがこくこくとうなずく。その瞳の奥には、覚悟を決めた冷静さが宿っていた。みんなこうだ。外面はふざけていたり真面目にやってなさそうに見えたりしても、内面はものすごく真面目で、忠実だ。

「ねーねー、カーリー。その、すーちゃん以外とも戦わなきゃいけないんでしょ?その人たちはどーなの?」

すーちゃん。進くんのことか。あだ名つけるの早っ。補佐が左手を顎に当て、静止する。しばらくして、動きだす。

「基本的には弱い奴ばかりですよ。学校の理事長と戦う際、まともに戦うと今いるメンバーでは到底勝てません。すぐに逃げるように。1ーC担任の朝倉仁もかなりの実力者。ってとこですね。それ以外の人で、現れる可能性があり、とても危険な人物は主に三人。眼真冥沙と牧ノ原陽眼、1-B担任の伊藤義朝です」

すると、マリンが高い声を上げて言う。

「じゃーさー、あたし、すーちゃんの相手したい!」

マリンに続いてウィリアムも言う。

「オレは他のクラスメイトを」

シャーロットとマリーは適当に他の人の足止めをするらしい。ボクもみんなのテンポに合わせて言う。

「えー、じゃ、ボクは陽眼ってやつ!」

「……あの人は危ないですよ」

「いいの!やりたい!」

駄々をこねると、カルロッタは少しため息をついて言う。

「後退命令は必ず聞くように」

「はーい!」

「それでは、作戦に向けての準備を……始めましょうか」